西岡隊長のスレッド『目標1300万円！』で言及されているように、国債報償志願金総合所（以下総合所）が国債報償期成会（以下期成会）の帳簿を検査しようとしたところ、期成会は拒否し続け、受け入れることになったあと、役員たちが逃亡してしまい検査ができなくなりました。いちおう史料の該当部分をテキストに起こしておきますね。
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一、韓国国債報償期成会は一時■況に達したるも此の醵集せし金員は発起人其の他の委員に於て費消し将に瓦解の運命に瀕しつつあることは客月通報せし如くにして其の後京城における醵集総合所なる団体に於て該金募集の各団体に対し金員簿冊の検査に着手したるに報償期成会なる一団は当初此の検査を拒みたるも以上の非難を恐れ之を諾したるを以て日を期し検査せんとしたるに会員共は四散して一人の止まる者なく之を執行すること能はさらしめたるを以て総合所は期成会の行為を怪み爾来同会の裏面を内偵するに此の募集金額は約五万円に達したるものの如く而て其の内金壱千七百余円は既に漢城銀行に預入しあるも此の余の大部分は所在明瞭ならす総合所が進て探求する所によれは約三万五六千円は同会の総務委員に於て之を支那貿易の資本金に融通し他の八九千円は京城商人に貸与したる形跡あり期成会総務委員は此の内幕の将に暴露せんとしつつあるを以て大いに苦悶しつつあり総合所は以来之か処置に付熟議を重ね一旦此の不正行為を公にせんとしたるも目下の所長旅行中なるを以て此の帰来を待居るもののごとし |
というわけで、韓国の新聞で、当時報償金を受け入れ、また社内に総合所を設置するなど、国債報償運動に熱心だった『大韓毎日申報』を見てみましょう。まず光武11年（1907年）7月11日付・17日付『大韓毎日申報』に総合所が出した広告です。
警告国債報償金義損諸氏自本所로京城内各収金所를次第調査中至若期成会
야
莫重義金을貯置不明고文簿眩惑야難以明査故로茲에広布오니該会로納金諸氏無一遅滞고領収証号数와金額과氏名과日字를昭詳히本所로録送야勿失義務심을敬要
大韓毎日申報社内国債報償志願金総合所 白
ソウルの各集金所を調査中だが、期成会は調査できなかった上に、その報償金の保管状況が不明で、帳簿も迷わせるようなものであり、きちんと調査することが難しい。そこで期成会に募金した人は領収証の番号・金額・氏名・日時を書いて総合所に送ってほしい、ということです。
そして、12月6日から13日、17日から21日、24日から27日にはこのような広告を掲載しました。
●特別広告
国債報償志願金総合所에셔磚洞普成館内期成会의義金受入文簿를調査랴다該会主務呉栄根等이偽詐不現고義金貯置가不明
所致로領証調査広告도已有엿거니외方将帯持証物고交渉官庁次로又此布告오니全国同胞照亮시며領証도不日示明시오
大韓毎日申報社内総合所
期成会の領収証調査広告は既に出したが、証拠物を持参して官庁に交渉するため布告します。全国同胞はどうか領収証をお示しくださいという内容です。既に出した広告というのは先に触れた7月17日の広告を指します。なお、この12月の広告の話は『統監府文書4』p337収録の警秘第248号「国債報償金に関する件」でも触れられています。
さて、その後はどうなったのでしょうか？年が明けて隆煕2年（1908年）1月10日付の『大韓毎日申報』にこのような読者の投稿が載っています。
○挙呉泳根罪状야告同胞兄弟 吉昇淵
（中略）
噫彼呉泳根은身為国債報償義捐金期成会会員兼総務員야公心血誠이宜当倍於他人而反棄自国精神고但聡銅臭ha야義捐金中六千余円을偸食얏스니 （中略）
一以声討呉賊之彰罪고（後略）
呉泳根は期成会の会員・総務員であり公に尽す心と誠実さを他人の2倍は持っていなくてはならないのに、その精神を捨ててただ金銭に敏感で報償金の中から6,000余円を盗んだ。（中略）呉の明らかな罪を声討つまり糾弾する、ということです。
呉が横領したのは事実とみていいでしょうね。
さて、西岡隊長のスレッドでも見たように期成会の保管金の内容は次の通りでした。
| 中国貿易の資本金に融通 | 約35,000円～36,000円 |
| ソウルの商人に貸与 | 8,000円～9,000円 |
| 横領金合計 | 約43,000円～45,000円 |
| 漢城銀行預け入れ | 1,700円 |
| 合計 | 約44,700円～46,700円 |
| 報償金総額 | 約50,000円 |
| 不明 | 約3,300円～5,300円 |
一応、考え得る最小値から最大値をとって見ていますが、「約」ですので四捨五入の切り上げ切り捨てはあるだろうということを踏まえて考えると、吉昇淵の言っている6,000余円ってこの不明金に当てはまるんじゃね？
つまり、期成会の報償金は、貿易の資本金に流用・商人に貸付・呉個人の横領によって、銀行に預け入れた1,700円以外は費消されていたと見ていいですね。
なお、1908年7月27日の憲機第40号（往電第18号「国債報償会募金に対するベセルの立場に関する件」の別紙。『統監府文書5』p210収録）では期成会の保管額を18,700円22銭７厘としています。また、1910年7月6日付『皇城新聞』には期成会の整理に当たった保管委員たちの広告があり、ここでは保管額が18,768円4銭（物品販売収入含む）としています。
大韓毎日申報や皇城新聞の募金額の減少傾向からみても、これらは横領事件以後に募金があったと見るより、横領された金銭を呉たち役員に弁済させてなんとか回収できた金額と考えた方がよさそうですね。
しゃおこー★史料整理中
