海底資源で日本の技術拡散！

「海のジパング計画」


■無人探査機開発で事業化！
　日本は中世の冒険家マルコ・ポーロが「黄金の国ジパング」と呼んだほど資源が豊かだったが、今は陸上の鉱物をほとんど掘り尽くし、資源小国になってしまった。ところが近年、周辺の海底に大量の鉱物資源が眠っていることが判明。これを事業化して経済成長につなげるため、新たな調査技術を開発する「海のジパング計画」を国が進めている。（伊藤壽一郎）



◆ノウハウ輸出も！
　「海底鉱物資源の調査技術を確立し、資源利用だけでなく、ノウハウの輸出も行うのが海のジパング計画です」。推進委員を務める海洋研究開発機構の堀田平理事は、こう語る。２０１４年度から５年間で総額３００億円を投じる見通しの内閣府のプロジェクトだ。
　対象となる海底鉱物は、熱水噴出孔の周辺に金や銀などが堆積した熱水鉱床や、ハイテク機器に必要なコバルトやニッケルを多量に含む鉱物塊のコバルトリッチクラスト、小笠原諸島の南鳥島周辺で見つかったレアアース（希土類）を高濃度に含むレアアース泥。
　堀田氏は「存在が知られてから日が浅く、まだ資源開発を目指している国が少ない。だからこそ、日本が世界をリードできる可能性がある」と、計画の意義を説明する。
　これらを資源として利用するには、広い海底のどこに、どんな形で、どれだけの含有率で存在するかを詳しく調べる必要がある。
　従来の調査は海上の調査船から音響センサーを使い、鉱物がありそうな場所を探索。有望な地点で、カメラやセンサーを備えた機器を海底近くまで下ろし、詳細に調べていた。しかし、これでは膨大なコストと時間がかかり、事業化には向かない。



◆複数機で編隊！
　そこで新たに開発を進めているのが、複数の自律型無人探査機を同時に運用し、効率的に調査するシステムだ。調査船から音波で通信・制御しながら、小型の４機で編隊を組んで広い範囲を機動的に調べる。
　１５年度に１機が完成し調査船との通信の仕組みを確かめるほか、海底での障害物の回避方法を検証。また、音波のほか重力や磁力の分布も測定できるセンサーを備えた多機能型の探査機で、さらに詳しく調べる計画も進んでいる。
　ただ、無人探査機で効率的に調べても、調査船のコストが課題になる。約４０人が乗り込むため、人件費がかさむからだ。そこで、調査船の役割を完全に自動で行う小型の「洋上中継ロボット」を開発し、１５年度中に多機能型の探査機との連携実験を行う。
　中継ロボットの弱点は衛星との通信だ。探査機が集めたデータは音波で洋上に送られ、通信衛星経由で陸上の研究施設に送信して解析するが、中継ロボットは小型のため揺れが大きく、アンテナと衛星の角度がずれやすい。
　２～３度ずれただけでも通信が途切れるため、高精度の姿勢制御技術や、揺れに強い小型アンテナの開発が必要になるという。

◆効率性を重視！
　鉱物資源を効率的に探すには、どんな環境の場所に存在しやすいかを知る必要がある。これを調べるため、深海底で高機能を発揮する無人探査機も開発する。
　走行用ベルトで海底を動き回り、ロボットハンドで岩石などを採取。海底を掘削して長さ約１・５メートルの柱状試料を５本回収できる。１５年度に試作機が完成する予定だが、作業時に海底にしっかり固定する方法の開発が課題という。
　 これらの研究開発を支援する海底広域研究船（５５００トン）の建造も進んでいる。全長１００メートル、幅１９メートルの大型船で、建造費は約２０５億円。 無人探査機を搭載・運用できるほか、海底の人工地震探査や試料採取も可能。延べ床面積４００平方メートルの研究スペースも備える。１５年度中に完成し、計 画推進の力強い武器になりそうだ。
　世界一の海底掘削能力を持つ地球深部探査船「ちきゅう」や、水深６５００メートルまで潜れる有人潜水調査船 「しんかい６５００」を使った研究で、日本はすでに世界最高水準の海底調査技術を持つ。しかし、学術研究と事業化は別物だ。堀田氏は「コストや効率を重視 して技術を開発し、ノウハウを民間に移転することで計画実現につなげたい」と話している。



■News Source
http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/150223/lif15022317260011-n2.html