正式名称『丸投！史料塾―リリカル大史料峠マジカルて？ふもっふ』第10回

前スレ
『丸投！史料塾―リリカル大史料峠マジカルて？ふもっふ』第9回

参考エントリー1
国有地の紛糾（一）
参考エントリー2
国有地の紛糾（十六）
参考エントリー3
土地調査事業に関する質疑応答（四）
参考エントリー4
土地開墾に関する件


「前回の最後で言ったように、ちょっとずつ参考エントリーを引用してみていくね。まずは参考エントリー2の続き」


その他、開墾の許可の立案を得るために様々な奸策を使って、一司七宮等の権力を持つ者に請託して立案を得ようとし、その弊害が非常に大きかったため、1906年（光武10年）に宮内府令によって、今後宮内府では荒蕪地の開墾を人民に許可しないことや、帝室所有地で開墾の必要がある地域は別な方法を作って告示し、従来開墾の許可を得ているものでも、その所属地で無いものは総て無効とすると発布した、と。


「開墾許可を得るために請託ってあるけど、『一司七宮』って何なん？」

「ちゃんと獄長日記の『国有地の紛糾（二）』に書かれてるよ」


帝室の内需及祭亨を掌る為、一司七宮と称するものあり。
一司七宮とは、内需司、於義宮、龍洞宮、明礼宮、壽進宮、毓祥宮、景祐宮、宣禧宮の総称にして、経理院と併立して各独立の財産を有し、盛に民田の侵掠、混入等種種の弊害を惹起したり。


「詳しい説明については国有地の紛糾（四）と国有地の紛糾（五）を読んでね」

「ま、ようは外廷(政府)やのうて内廷(王室)関係やねんな。そんなとこが政務に嘴突っ込んで、勝手に開墾許可を出すっちゅうんはええことちゃうわなぁ」

「宮内庁や宮家がめいめい勝手に農地開発の許認可をするようなんもんだよね。それなんて中世？」

「中世どころか、律令制社会とか荘園の拡大・武士の勃興で律令制の崩壊していく平安中期か末期なの…」

「で、そんな状態を改善するために1906年（光武10年）に宮内府令を出したんだね」

「そういうこと。宮内府令の詳細については、獄長が参考エントリー4で解説してるから逐次引用するね。まず第4条の書き下し文と獄長解説」


第4条本令頒布前に正当なる節次を経て開墾を認許するを得たる者で期限の指定が無き者は、本令頒布後1個年内に開墾に着手せざる時は該認許を繳消す。
認許を既に得たる者が開墾に着手する時は其の旨を宮内府へ報せ臨検を請うこと。

第4条は、大意として本令発布前に正当な手続きを経て開墾の認許を得た者は、期限の指定が別に無い場合でも、本令発布後1箇年以内に開墾に着手しない場合には、認許を取り消す。
認許を得て既に開墾に着手している時は、その旨を宮内府に報告して臨検を請うこと、かな？


「また確信なさげに書いとるで」

「じゃ、ここも前回使った『朝鮮土地調査事業報告書』の177ページを見てみね」


明治三十九年(光武十年七月)土地開墾に関する件を発布し自今宮内府にては荒蕪地の開墾を人民に認許せす本今発布前開墾の許可を得たるも正当の節次(手続のこと)を経さるものは無効なり又正当の節次を経て開墾の認許を得たる者と雖期限の指定なきものは本令発布後一箇年以内に開墾に著手せされは該許可を繳消す

「この本親切やねんなぁ。こっちもちゃんと注釈つけとるやん」

「どうしてこの条文ができたのかな？獄長は突っ込んでいないからわかんないんだけど…」

「簡単なことだよ。前回ふれた記述に『又、甚だしきは一旦起墾の立案を受くるも、事実起墾に着手せずして放置し、他人の労力を加へて該地域を開墾するを傍観し、其の開墾成功後に於て曩に受けたる立案を理由に、其の土地を横領せる事例あり』ってあったでしょ。あれを防ぐためのものなの」

「あ、そっか。許可受けたままあえて放置するのを防ぐために開墾開始の期限をきって、しかもちゃんと開墾に着手したかを確認するために宮内府の臨検を必要とするんやな」

「そういうことだよ。じゃ、次は第6条」


第6条
各宮家から其の所属土地の開墾を認許せんとする時は、宮内大臣を経て勅許を奏請し勅許を経ざる者は無効とす。

残りの第6条は、各宮家より其の所属土地の開墾を認許された時でも、宮内大臣を経て勅許を奏請したものでなければ無効。
自信無ぇ。（笑）


「各宮家が自分のところに所属する土地の開墾許可を出す場合は、宮内大臣を通して勅許を貰わなきゃだめってことだね」

「勅？あ、大韓帝国の皇帝やから間違いちゃうんやな」

「うん。続いて第7条を見てみるよ」


第7条
本令頒布前に各宮家から開墾を認許する者で、其の所属地に非らざる者は皆無効とす。
但し、所属地に係わる者は第3条、第4条の規定を適用す。

第7条は、この宮内府令以前に宮家から開墾を許可された者で、宮家の所属地でないものは皆無効、かな？
で、所属地に係る場合は、第3条、第4条の規定を適用、と。
つうか、許可受けてるけど「所属地でないもの」が規定されてるってどうよ、と。（笑）


「獄長が『つうか、許可受けてるけど「所属地でないもの」が規定されてるってどうよ、と。（笑）』って突っ込んどるけど、これってさっき見た『一司七宮』が勝手に所属地以外の土地に対して開墾許可出した分についての処理規定やな」

「そう考えるのが妥当だよね。今シリーズのネタ本『朝鮮土地調査事業報告書』の178ページでは、この第6条と第7条についてこう書いてあるよ」


又各宮家は其の所属にあらさる土地に対し開墾の認許を禁止す各宮家所属の土地なりとも開墾の認許を為すには宮内大臣を経て勅許を奏請し勅許を経さるものは無効なることを規定し其の後国有未墾地利用法発布せられ該法に依れは民有地以外の原野荒蕪地草生地沼沢地及干潟地は全部国有未墾地として該法令の適用を受くることとし開墾牧畜植樹製塩養魚等の為国有未墾地の利用を希望するものは農商工部に出願し該地域の貸付を受け予定の事業成功の暁には払下又は無償付与を受くることを得へく尚三町歩を超えさる国有未墾地の利用に付ては当分の間旧慣に依り本法の規定に依らさることを得ることと為れり

「各宮家は宮家で勝手に所属地以外の開墾許可を出し、民は民で開墾許可を受けたままあえて放置して他人が開墾するのを待ったり、一方では誰のものかわからない土地を勝手に開墾したりと上も下もむちゃくちゃなことだらけだよ」

「土地調査がどうこういう以前に、土地制度がグデグデやもんなぁ…」

「今回はここまでにするね。次回も引続き獄長日記のエントリーと『朝鮮土地調査事業報告書』をみていくね。もっとグデグデな様子がわかるの」

rinfie☆勝手に通詞中