鉄道話


「関門新ルート」構想、実現に加速 彦島-小倉間が有力 26年度調査費計上で政府に働き掛けへ
2013.6.23 19:24

 九州と本州の大動脈である関門鉄道トンネルと国道トンネルの老朽化が進む中、「関門新ルート」構想が本格的に動き出した。山口県下関市彦島-北九州市小倉北区間(約2・5キロ)を結ぶルートが有力。山口県は平成25年度予算で調査費3千万円を計上、福岡県など他自治体や地元財界も実現に向け、動きを加速している。
 関門新ルートは、関門海峡の下関市彦島迫町と北九州市小倉北区西港町付近を結ぶルートが有力となっており、道路と鉄道の併用ラインを建設する案を軸に検討を進めている。
 関門橋と同様につり橋にする案と、「ボスポラス海峡横断鉄道」(トルコ)と同じ方式の沈埋(ちんまい)トンネルにする案の2つがあり、総事業費は併用橋で2千億円強、沈埋トンネルで1千数百億円が見込まれるという。
 山口県の山本繁太郎知事は昨年7月、新ルート建設推進を公約に掲げ、初当選。25年度予算に調査費3千万円を計上した。
 これを受け、福岡県の小川洋知事は今月17日、同県議会で「具体化に向け必要な調査を行うよう国に働きかけをしていく」と明言。北九州市の北橋健治市長も14日に「国の責任で建設することが重要だ。政府に要請していく」と述べた。
 地元財界の動きも活発化している。九州経済連合会(九経連)、中国経済連合会(中経連)などが結成する「関門海峡道路建設促進協議会」は昨年9月、関門新ルートの早期実現を求める要望書を国土交通省に提出した。
 協議会は7月26日に総会を開き、新ルート具体化に着手する方針。九経連の麻生泰会長は8月にも、安倍晋三首相らに実現を要望することを検討している。
 現在、九州-本州間の大動脈として関門海峡には、関門国道トンネル(国道2号、3・4キロ)▽関門鉄道トンネル(JR山陽線、3・6キロ)▽関門橋(高速自動車道、1・1キロ)▽新幹線トンネル(18・7キロ)-の4ルートがある。
 ただ、関門鉄道トンネルを除くと、既存路線は、下関市壇之浦町と北九州市門司区和布刈(めかり)地区の間を通る早(はや)鞆(とも)瀬戸水道と呼ばれる海峡最狭部に集中し、出入り口は下関、北九州両市の中心部から大きく外れる。
 また、鉄道トンネル(昭和17年完成)は、漏水が1日600トンに上るなど老朽化が著しい。国道トンネル(同33年完成)も老朽化が進み、補修工事による長期間の通行止めをしばしば実施。片側1車線なので許容量も限界となっており、事故の危険性もある。
 このため、この2ルートに代わる新ルート構想は、同60年に地元自治体や財界を中心に浮上、以来研究・調査を続けてきた。
 政府は平成10年、関門海峡など6海峡に横断道路を造る海峡横断プロジェクトを策定し、閣議決定。その後、交通量や地質の調査を実施し、12年には彦島-小倉ルートを有力とする暫定報告書をまとめた。ところが、政府は20年3月、公共事業見直しの中で他の海峡横断プロジェクトとともに関門新ルートを白紙撤回した。
 それだけに地元自治体や財界は「安倍政権は構想を実現する最後のチャンス」として26年度予算での調査費計上に向け、働きかけを強める構えだ。


【大動脈が危うい-関門新ルート構想】
(1)進む動脈硬化 国道トンネル…対面通行で許容量限界 鉄道トンネル…漏水1日600トン 関門遮断で経済損失14兆円!
2013.6.23 21:46

関門鉄道トンネル内に設置されている大型ポンプ。このポンプ4基で1日600トンを排水している=北九州市門司区

 3・4キロにわたって続く薄暗い海底トンネル。片側1車線の対面通行なのでセンターラインのギリギリに大型トレーラーが次々と対向してくる。道幅は8メートルしかなく、左側は白いタイル張りの壁が迫る。この長く狭いトンネルで、1台でもセンターラインをはみ出したら…。あらぬ想像が脳裏をよぎった。玉突き事故で車両火災が発生したら、立ちこめる黒煙の中でどう逃げたらよいのか-。
 関門国道トンネル(国道2号線)は昭和33年に開通した。48年に関門橋が完成し、主役の座を譲ったが、半世紀にわたり、九州-本州の大動脈の一つであることは変わりない。車道の下には無料の歩道(780メートル)もあり、住民たちの生活を支えている。
 とはいえ、その交通量は、キャパシティ(許容量)をはるかに超えている。1日3万台という通行量は新東名高速道路に匹敵し、トンネル内で渋滞が起きないギリギリの台数で、料金所付近は慢性渋滞となっている。
 しかも平成20~22年度は1年間のうち100日前後が通行止めだった。トンネルを管理する西日本高速道路(NEXCO西日本)が3カ年計画で補修工事を実施したからだ。
 海底トンネルは塩分が染み込んでくるため、傷みが早く、壁面タイルの貼り替えや、腐食した鉄筋やコンクリートの補修は欠かせない。工事中、関門橋の通行量は2倍以上に増え、しばしば渋滞を起こした。
 維持管理費もバカにならない。3カ年の補修工事費は計80億円。これを10年おきに実施しなければならない。それ以外にも年6億円の維持管理費がかかる。
 西日本高速道路の早瀬正文広報課長は「メンテナンスを怠ると加速度的に状態が悪くなり、取り返しがつかなくなります。対面通行なので大規模補修では通行止めにせざるを得ませんが、事故を防ぐためにも欠かせません」と説明する。

× × ×

 JR九州が管理する関門鉄道トンネル(3・6キロ)はさらに古い。九州と本州を直結する初のルートは、大戦中の昭和17年に完成した。橋では米軍の艦砲射撃の格好の標的になりかねないと考え、鉄道省が日本で初めてシールド工法を採用したという逸話も残る。
 先人が夢と誇りをかけた堅牢な作りではあるが、70年の歳月には勝てない。トンネル内の海水や地下水の漏水量は1日600トン。トンネル中央は側溝から滝のように水があふれており、JR九州は大型電動ポンプ4基を設置し、常時排水している。
 独立した2本のトンネルにJR山陽線が一日上下200本行き交うが、正午から3時間程度は片方のトンネルが閉鎖され、単線運転になる。打音検査などの保守管理作業を行うからだ。
 トンネル壁面には、至る所に丸印や「ウキ」などの文字が赤いペンキで書かれている。保守管理担当の作業員が、コンクリートのひび割れや剥離(はくり)などを見つけた際に付ける印だ。正式な額は公表していないが、JR九州は維持管理に毎年数億円を投じているという。
 九州-本州間のトンネルは、新幹線トンネル(18・7キロ)もあるが、こちらは貨物輸送には使えない。片側3車線の関門橋があるといっても、人口約1300万人の九州の物流ルートは実は心許ない。「綱渡り」といっても過言ではない。

× × ×

 関門海峡の交通遮断による経済損失は年間14兆円-。福岡、山口両県と北九州、下関両市と地元企業で構成する「関門海峡道路建設促進協議会」が、平成22年に作成した報告書にはこんな衝撃的な数値が記されていた。内閣府が推計する東日本大震災の直接的な被害額(16兆円)と大きくは変わらない金額だ。
 協議会は、関門海峡にかかる関門国道トンネル▽関門鉄道トンネル▽関門橋▽新幹線トンネル-の4本がすべて遮断された場合、九州で生産された農作物や工業用部品のサプライチェーンが崩れ、九州だけでなく首都圏や関西圏にどれだけの経済損失をもたらすかを計算した。
 東日本大震災では、東北地方のサプライチェーンが寸断され、直接的な被害は受けなかった地域でも工場が稼働停止に追い込まれたり、品不足が頻発した。
 それでも道路網は日本海側に代替ルートがあった。橋とトンネル3本が集中する関門海峡で大きな災害があった場合の影響は比べものにならない。
 九州経済連合会社会資本部の広瀬香部長はこう力説した。
 「関門海峡が遮断されたら日本経済は壊滅すると言ってもよいでしょう。今はあるのが当たり前ですが、ひとたび失われたときの損失は計り知れない。今のうちから対策を考えておくべきだと思います」

× × ×

 6月14日、北九州市議会6月定例会。鷹木研一郎市議(自民党市議団)は、北橋健治市長に迫った。
 「大規模災害時、関門海峡の交通路が同時に遮断されることも想定される。本州からの陸路が完全に断たれることになれば、災害対応はじめその後の復旧・復興対応への影響ははかりしれません。経済損失は年間14兆円に上るという試算もあり、リダンダンシー(交通ネットワークの多重化)確保の面からも新たな関門海峡道路(関門新ルート)の実現は極めて重要です」
 北橋氏はこう答えた。
 「万一のときに日本経済がこうむる打撃を考えると、国策として取り組むのが重要だ。引き続き国に要請を続けたい」。
 九州-本州間の大動脈は4本あるとはいえ、その多くは動脈硬化を起こしており、危うい。アベノミクスにより景気が回復基調に乗る中、九州経済圏の生命線である関門海峡に新ルートを作るべきだという声が急速に高まりつつある。その背景を追った。(大森貴弘)


開通から半世紀。老朽化が進む関門国道トンネル=山口県下関市


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(2)政治に翻弄され続けた大プロジェクト 安倍家二代の因縁も 
 
2013.6.24 22:33

山口県知事選挙で勝利をおさめ、花束を受け取る山本繁太郎氏(中央)。知事選の結果、関門新ルート構想が息を吹き返した=平成24年7月29日

 「海峡横断プロジェクトの調査について、個別のプロジェクトに関する調査は今後行わないこととします」
 平成20年3月28日、冬柴鉄三国土交通相(当時、故人)は閣議後の記者会見でこう宣言した。この瞬間、昭和60年から温められてきた「関門新ルート」構想は水泡に帰した。
 福田康夫首相が率いる自公政権は当時、衆参ねじれに翻弄されていた。野党第1党の民主党は、政府の「無駄な公共事業」を徹底糾弾しており、政府は大型プロジェクトを断念せざるを得なかったのだ。
 海峡横断プロジェクトとは全国6海峡に連絡道路を通すという壮大な計画で、橋本龍太郎内閣が平成10年3月に全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」として閣議決定した。確かに紀淡連絡道路や豊予海峡道路などほとんど必要性のない事業も多く、強行すれば民主党の「餌食」になる公算は大きかった。必要性に迫られている関門新ルートが、同じプロジェクトに連なっていたばかりに葬り去られたのは不運だったとしか言いようがない。
 地元の落胆は大きかった。地元自治体や財界が組織する関門海峡道路建設促進協議会のメンバーである関門港湾建設(山口県下関市)の清原生郎社長は悔しそうに当時を振り返る。
 「茫然自失でしたよ。事業凍結の際、個々のプロジェクトがどれほど必要性や緊急性があるのかは一切勘案されなかったことが残念でなりません。関門ルートは本州と九州の生命線であり、もし寸断されると全国に影響が及ぶ。それを地道に訴えてきたんですが…」
 関門新ルート構想は、関門国道トンネル(昭和33年完成)と関門鉄道トンネル(昭和17年完成)の老朽化と許容量不足を受け、山口、福岡両県で30年以上前から温められてきた。
 構想が公の場に登場したのは昭和60年。建設省(当時)の北九州地域産業・港湾都市整備計画調査で検討課題に上がったのだ。平成2年の九州地方開発促進計画では「本州、四国、九州を結ぶ交通体系について長期的な視点から検討」と記された。
 当時、安倍晋三首相の父、晋太郎氏(故人)が外相を務めており「次の首相」の呼び声が高かった。山口、福岡両県の財界は「関門新ルートを首相就任の目玉プロジェクトにしよう」と意気が上がった。
 晋太郎氏は3年5月、志半ばで死去するが、構想は着々と進行した。建設省は4年に基礎調査に着手し、10年の全国総合開発計画にも盛り込まれた。建設省は交通量や地質などの調査を実施し、12年には「下関市彦島迫町と北九州市小倉北区西港町付近を橋梁(きょうりょう)方式で結ぶことが望ましい」とする暫定報告書をまとめた。
 いよいよ着工か-。地元は盛り上がったが、平成13年4月に小泉純一郎首相となり、雲行きが怪しくなる。財政再建を掲げる小泉氏は道路公団民営化などに次々着手し、関門新ルートの着工は持ち越された。
 それでも国土交通省は毎年調査費を計上し、福岡・山口両県と北九州・下関両市とともに交通量調査や関門海峡の潮流・地質調査を続けてきた。
 20年の事業の白紙撤回がどれほど地元に衝撃だったか、想像に難くない。プロジェクトの事前調査を担っていた財団法人海洋架橋・橋梁調査会も廃止に追い込まれた。21年9月には「コンクリートから人へ」を掲げる民主党の鳩山由紀夫政権となり、構想は完全に潰えたかに思われた。

× × ×

 だが、消えたはずの構想は突如として息を吹き返した。端緒を開いたのは昨夏の山口県知事選だった。
 「下関と北九州は一体の都市として栄えてきました。関門海峡道路(関門新ルート)は関門都市の安全のためにも整備しなくてはなりません。国交省も必要性は理解してくれるはずです!」
 平成24年5月19日、下関市で開かれた自民党政経セミナーに来賓で訪れた知事候補の山本繁太郎氏(現山口県知事)は出席者700人を前にこう語った。山本氏は元国土交通審議官。この瞬間、関門新ルートは公約となった。
 セミナーに出席していた下関市の香川昌則市議は「いや、びっくりしましたよ。関門海峡道路は5年前に白紙撤回されたと思っていましたから。でも『本当にできたらいいな』と再び淡い期待が芽生えたのも確かです」
 この後、国政の流れも大きく変わった。9月の自民党総裁選で安倍氏が再び総裁に選出されると、野田佳彦首相(当時)は11月16日に衆院を解散。衆院選で自民党は圧勝し、12月26日、安倍氏は第96代首相に選出された。
 副総理兼財務相には福岡県選出の元首相、麻生太郎氏が就任。デフレ脱却に向けアベノミクスが強力に動き出した。
 5年間止まっていた時計の針も、急に動き始めた。山本知事は25年度予算で関門新ルート建設に向けた調査費3千万円を計上。「下関と北九州市はほとんど一体の都市。両市の新たな連絡道路は下関にとって不可欠のインフラなんです。関門一体の産業活動のため早く造らなければならない」と息巻いた。福岡県や北九州市、地元財界も構想実現に向け、動き始めた。
 安倍晋三後援会の古参幹部は感慨深そうに語った。
 「関門新ルートは、先代の晋太郎氏の見果てぬ夢なんです。それが息子の晋三氏の代に実現に動き出すとは…。何か因縁めいたものを感じます」
(大森貴弘)



(3)ボスポラス海峡で世界に示した日本の技術力 沈埋トンネルの優位性とは 鉄道併設は絶対条件
2013.6.26 16:09

ボスポラス海峡横断鉄道のトンネル建築工事。陸上のドックでトンネル下部を作り、海面に浮かべて上部を作った=2006年6月、トルコ

 南北30キロにわたってアジアとヨーロッパを隔てるボスポラス海峡。この両岸は、古代ギリシャのビザンチオン、東ローマ帝国のコンスタンチノープル、オスマン帝国のイスタンブール-と紀元前から幾度も名を変えながら栄え続け、現在も人口1300万人を擁するトルコ最大の都市となっている。
 海峡に分断された都市を一つにしたい-。このトルコ国民の悲願を叶えるのがボスポラス海峡横断鉄道だ。2011(平成23)年2月にトンネル部分は貫通し、今年10月の開通を目指して最終的な設備工事が進んでいる。
 この工事を担ったのが日本有数のゼネコン、大成建設を中心とするJV(共同企業体)だった。これが歴史的にも結びつきが近い日本とトルコの絆をより強めることになったが、工事は困難を極めた。

× × ×

 海底トンネルは陸地から穴を掘り進むシールド工法が一般的だが、費用がかさむため、トルコ政府は「沈埋工法」を指定した。
 海底に溝を掘り、そこにあらかじめ港で造った長さ100メートル前後のトンネル(ケーソン)を沈めてつなげる工法だ。水深の浅い川などでよく使われる工法だが、長大な海峡でこの工法が採用された例はない。
 ボスポラスの水深は最大60メートル。しかも黒海と地中海(マルマラ海)を結ぶため潮流が速く、上層と下層で潮の向きが異なる。あまりに難工事が予想されるため、世界的な建設会社が尻込みする中、大成建設が「わが社の技術ならば十分に可能だ」と手を挙げた。
 工事を主導した大成建設土木設計部の土屋正彦部長(54)はこう打ち明けた。
 「この話を聞いたとき、喜びに震えましたよ。技術者冥利につきるとね。同時に私のキャリアをすべてかける難工事になるだろうと思いました」
 まず海峡の潮流パターンをつかむことが何より大切だった。ケーソンを作業船に乗せて現場まで運び、ケーブルでつり下げて海底に沈める際、潮に流されると修正が効かないばかりか、事故の危険性も大きくなるからだ。
 2004(平成16)年8月に始まった潮流調査には1年半を費やした。季節や天気、時間によって潮流がいかに変化するのか。徹底的にデータを集め、潮流パターンを分析した。
 この結果、ケーソンを沈める際、上層潮流が毎秒1.5メートル、下層潮流が毎秒1メートル以下ならば安全に工事ができることが分かった。黒海に流れ込む川が氾濫すると3カ月後に海峡の流れが速くなることもつかんだ。
 ケーソンを1個沈めるのに36時間を要する。土屋氏らは分析データから36時間安全基準を満たす日を割り出し、工事を敢行した。沈埋工事は2007(平成19)年3月から3年11カ月を費やしたが、もっとも恐れていた事故はゼロだった。事前準備段階の2000(平成12)年から計13年間もこの大プロジェクトにかかわった土屋氏は笑顔でこう語った。
 「結局、私の土木屋としてのキャリアの4割をこの工事に費やしました。でも、やってきたことが百パーセント正しかったと立証される喜びは何にも代えがたい。鉄道が開通したら家族で乗りにいくつもりですよ」

× × ×

 ボスポラス海峡で証明された世界一の沈埋工法の技術が再び日本で生かされるかもしれない。
 下関市彦島と北九州市小倉北区を結ぶ関門新ルートでは、沈埋工法によるトンネルが有力候補になっているからだ。
 理由はいくつかある。
 その筆頭はコストだろう。国土交通省(当時は建設省)が平成12年にまとめた暫定報告では「橋梁(きょうりょう)方式が有力」としたが、コストはかさむ。九州経済連合会の試算によると、長さ2キロの吊り橋で事業費2千億~2500億円が見込まれるという。
 これに比べて、ボスポラス海峡横断鉄道の総事業費は、陸上部分を含めたトンネル総延長13.5キロ(海底部1.4キロ)で1023億円だった。日本は人件費などがかさみ、これほど安くはできないが、関門新ルートでも1千数百億円に収まるとみられている。
 もう一つは管理面での優位性だ。シールド工法で作った海底トンネルは、漏水は避けられない。関門国道トンネルも1日4800トンの漏水を処理しており、年間の維持コストは6億円に上る。ところが沈埋工法では、漏水はほぼゼロで維持コストはぐっと減る。
 土屋氏は「沈埋工法はきちんとしたコンクリートを使えば、ほぼメンテナンスフリーです。日常的な検査・補修を怠らなければ100年以上は持ちますよ」と胸を張る。
 道路と鉄道の併用トンネルを造りやすいこともメリットの一つ。シールド工法は丸くくりぬくが、沈埋工法は四角いケーソンを使うため、余ったスペースに電線やガス管などを埋設することも可能となる。
 もう一つ強みがある。陸上でケーソンを建造するため、地元の中小業者が工事に参入しやすいのだ。
 平成22年7月、関門新ルート建設を求める地元組織「関門海峡道路建設促進協議会」のメンバー30人はボスポラス海峡を訪れ、沈埋工事を見学した。国交省の判断が最終的に沈埋トンネルに傾く可能性があると踏んだからだろう。

× × ×

 新関門ルートの建設を急がねばならない理由として、関門国道トンネルと関門鉄道トンネルの老朽化と許容量不足を挙げたが、実はもう一つ大きな問題がある。
 日本海と瀬戸内海を結ぶ関門海峡は、500トン以上の船舶が年間5万隻航行する。ところが、もっとも浅い部分の水深は12メートルしかないため、3万トン未満の貨物船しか通過できない。
 国交省関門航路事務所は航路を浚渫(しゅんせつ)し、平成40年代中ごろまでに水深14メートルにする計画をたてているが、ここで障害となるのがJRの在来線が通る関門鉄道トンネルなのだ。
 昭和17年に開通した同トンネルは海底からトンネル最上部まで最小で7メートル。船舶の航行部分を水深14メートルまで浚渫すると、漏水が急増したり、トンネル部分が浮き上がる可能性もある。
 国交省が平成12年の暫定報告で彦島-小倉北ルートを選んだ理由の一つがここにある。このルートは水深20メートルあり、トンネルを作っても大型船舶の航行の障害とはならないからだ。
 関門新ルート構想を具体化する中で、橋であってもトンネルであっても道路と鉄道との併設は絶対条件となる。同時に関門航路の整備も視野に入れなければならない。
(大森貴弘)

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130626/plc13062616100013-n1.htm

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どうでもいいから、
必要な物ならちゃっちゃととお安く作って欲しいもんだね。
( ´-ω-)


~ 以上 ~

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