カナダのコンビニ大手がセブン&アイHDに買収提案 専門家は実現には「乗り越えるべき課題が多い」
セブン&アイHDへ買収を提案したアリマンタシォン・クシュタール
セブン&アイHDは19日、カナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたことを発表しました。買収が実現すれば海外企業による日本企業の買収としては最大級となる見通しです。
【動画】セブン&アイに買収提案 時価総額5兆円超
セブン&アイHDへ買収を提案したアリマンタシォン・クシュタールはサークルKやクシュタールのブランドで、コンビニやガソリンスタンドを手掛けています。北米やヨーロッパを中心に31カ国でおよそ1万7000店を展開し、売上高は692億ドル(約10兆円)です。
セブン&アイの時価総額から換算すると買収額は5兆円を超えるとみられ、実現すれば海外企業による日本の買収としては最大級となる見通しです。セブン&アイは社外取締役で構成する独立委員会を立ち上げ、慎重かつ速やかに検討して返答する予定としています。この買収提案を受けて、セブン&アイの株価は19日、先週末に比べ400円高い2161円へ急騰し、ストップ高となりました。
今回の買収の狙いについて「UBS証券」小売業界担当の風早隆弘さんは「クシュタールが北米市場でプレゼンスを上げようとすればM&Aが必要。その中で一番大きなセブンを買えば、コンビニの北米でのプレゼンスがより上がる。北米事業でのマーケットシェアを上げて、シナジーをとっていく戦略」と語ります。
アリマンタシォン・クシュタールは売り上げの7割がガソリン販売事業
セブン&アイHDの井阪隆一社長はテレビ東京の取材に対し「全店ガソリンスタンド併設。レベル的に小売部門が強くない」と答えました。アリマンタシォン・クシュタールは売り上げの74%をガソリン販売事業が占めています。
「ガソリンの粗利が安定して高止まりしているのも、買収提案してきた一つの裏付けになっていると思う」(井阪社長)
「『日本的なコンビニを世界に』とは相入れない?」
「そうですね」(井阪社長)
セブン&アイHDの関係者も警戒感を示します。
「もう5年前から話が来ている。その間2回検討した。先方は今回100%完全買収を求めている。セブン&アイの北米事業に関心を持っていて『日本にはあまり興味がない』と言っているようだ。シナジーも何もあったものではない」(セブン&アイHD関係者)
専門家はセブン&アイ側の描いている成長戦略と異なるため、買収の実現性は低いとみています。
「どこかの会社に買われて一緒にやっていこうというよりも、セブンは自分たちの成長戦略を取っていく方が企業価値向上に繋がると考える可能性が高い。セブン&アイHD経営陣がイエスと言うのかも含め、実現可能性は慎重に見る必要がある」(「UBS証券証券」の風早隆弘さん)
買収提案のクシュタールとは?
セブン&アイHDとアリマンタシォン・クシュタールの比較
改めてセブン&アイHDに買収提案をしているカナダのアリマンタシォン・クシュタールがどんな会社なのか両社を比較します。
グループとしての売上高はクシュタールが10兆円、セブン&アイHDが11兆円と近く、同じコンビニ事業を展開しています。一番大きな違いはクシュタールのコンビニはガソリンスタンド併設型という点です。実は売り上げ全体の74%はガソリン販売が占めていて、コンビニ売り上げは全体の25%程度しかありません。
時価総額ではクシュタールが8兆5000億円と、セブン&アイよりかなり大きくなっています。クシュタールはこの巨額の買収提案で、北米市場でのシェアを上げるとみられていますが、アメリカでは日本のようにコンビニの寡占化が進んでいません。
アメリカ国内のコンビニ店舗のシェアを見てみますと、1位はセブン-イレブンで1万2800店舗ほど。2位がクシュタールのサークルKで、7000店舗になっています。ただアメリカのコンビニは全部で15万店以上もあり、この2社を合わせても全体の13%ほどしかありません。
海外企業による日本企業の巨額買収は、台湾の鴻海によるシャープ買収などがありますが、事例が多いわけではなく、セブンの経営陣も前向きではありません。UBS証券の風早さんも「買収の実現可能性はかなり乗り越えるべき課題が多い」と話していました。
カナダのコンビニ大手がセブン&アイHDに買収提案 専門家は実現には「乗り越えるべき課題が多い」
セブン&アイHDへ買収を提案したアリマンタシォン・クシュタール
セブン&アイHDは19日、カナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたことを発表しました。買収が実現すれば海外企業による日本企業の買収としては最大級となる見通しです。
【動画】セブン&アイに買収提案 時価総額5兆円超
セブン&アイHDへ買収を提案したアリマンタシォン・クシュタールはサークルKやクシュタールのブランドで、コンビニやガソリンスタンドを手掛けています。北米やヨーロッパを中心に31カ国でおよそ1万7000店を展開し、売上高は692億ドル(約10兆円)です。
セブン&アイの時価総額から換算すると買収額は5兆円を超えるとみられ、実現すれば海外企業による日本の買収としては最大級となる見通しです。セブン&アイは社外取締役で構成する独立委員会を立ち上げ、慎重かつ速やかに検討して返答する予定としています。この買収提案を受けて、セブン&アイの株価は19日、先週末に比べ400円高い2161円へ急騰し、ストップ高となりました。
今回の買収の狙いについて「UBS証券」小売業界担当の風早隆弘さんは「クシュタールが北米市場でプレゼンスを上げようとすればM&Aが必要。その中で一番大きなセブンを買えば、コンビニの北米でのプレゼンスがより上がる。北米事業でのマーケットシェアを上げて、シナジーをとっていく戦略」と語ります。
アリマンタシォン・クシュタールは売り上げの7割がガソリン販売事業
セブン&アイHDの井阪隆一社長はテレビ東京の取材に対し「全店ガソリンスタンド併設。レベル的に小売部門が強くない」と答えました。アリマンタシォン・クシュタールは売り上げの74%をガソリン販売事業が占めています。
「ガソリンの粗利が安定して高止まりしているのも、買収提案してきた一つの裏付けになっていると思う」(井阪社長)
「『日本的なコンビニを世界に』とは相入れない?」
「そうですね」(井阪社長)
セブン&アイHDの関係者も警戒感を示します。
「もう5年前から話が来ている。その間2回検討した。先方は今回100%完全買収を求めている。セブン&アイの北米事業に関心を持っていて『日本にはあまり興味がない』と言っているようだ。シナジーも何もあったものではない」(セブン&アイHD関係者)
専門家はセブン&アイ側の描いている成長戦略と異なるため、買収の実現性は低いとみています。
「どこかの会社に買われて一緒にやっていこうというよりも、セブンは自分たちの成長戦略を取っていく方が企業価値向上に繋がると考える可能性が高い。セブン&アイHD経営陣がイエスと言うのかも含め、実現可能性は慎重に見る必要がある」(「UBS証券証券」の風早隆弘さん)
買収提案のクシュタールとは?
セブン&アイHDとアリマンタシォン・クシュタールの比較
改めてセブン&アイHDに買収提案をしているカナダのアリマンタシォン・クシュタールがどんな会社なのか両社を比較します。
グループとしての売上高はクシュタールが10兆円、セブン&アイHDが11兆円と近く、同じコンビニ事業を展開しています。一番大きな違いはクシュタールのコンビニはガソリンスタンド併設型という点です。実は売り上げ全体の74%はガソリン販売が占めていて、コンビニ売り上げは全体の25%程度しかありません。
時価総額ではクシュタールが8兆5000億円と、セブン&アイよりかなり大きくなっています。クシュタールはこの巨額の買収提案で、北米市場でのシェアを上げるとみられていますが、アメリカでは日本のようにコンビニの寡占化が進んでいません。
アメリカ国内のコンビニ店舗のシェアを見てみますと、1位はセブン-イレブンで1万2800店舗ほど。2位がクシュタールのサークルKで、7000店舗になっています。ただアメリカのコンビニは全部で15万店以上もあり、この2社を合わせても全体の13%ほどしかありません。
海外企業による日本企業の巨額買収は、台湾の鴻海によるシャープ買収などがありますが、事例が多いわけではなく、セブンの経営陣も前向きではありません。UBS証券の風早さんも「買収の実現可能性はかなり乗り越えるべき課題が多い」と話していました。