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正気なのか、韓国・文在寅政権が本気で「言論統制」に乗り出した



民主主義国家では考えられない言論統制に本気で乗り出した文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)


(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 自分たちの気に入らない言論に対しては「虚偽・操作報道だ」と決めつけて弾圧し、北朝鮮の挑発や妄言に対しては「状況を鋭意注視している」としか言わない文在寅政権と与党。そんな国になりかけている韓国は「言論統制」が日常的になされる社会主義国と何ら変わらない国家になってしまったのか。北朝鮮が思い通りに操れる国になってしまったのか――。

与党が進める言論統制、違反したメディアには厳罰
「朝鮮日報」は8月12日付で、〈「言論懲罰法、朴正煕軍事政権も作ろうとしたが撤回」 野党はもちろん、保守・進歩とも反対〉と題する記事を掲載した。これは韓国の言論の自由に大きな制約を課し、韓国社会を軍国主義国、社会主義国のような国に変貌させかねない危険な立法である。まずはその記事の要旨を紹介しよう。

〇与党・共に民主党が推進する「言論仲裁法改正案」について、野党・国民の力はもちろん、与党系の正義党をはじめ、言論・市民団体、学界、法曹界など、保守派か進歩派かを問わず、あちこちから反対の声が相次いでいる。それでも与党は11日、「当初の計画通り25日の国会本会議で改正案を処理する」という。

〇今回の改正案は、法律で「虚偽・操作報道」を規定し、これに対し被害額の最大5倍までの懲罰的賠償を報道機関に課す条項を盛り込んでおり、「批判するマスメディアを事実上無力化させ、表現と言論の自由を抑圧し、政治・経済の権力者が言論にくつわをはめる恐れがある」と批判されている。

〇この法律は「政治・経済権力が悪用する」恐れがあり、「軍事政権でもできなかった発想である」。親与党系団体の民主言論市民連合でさえ「権力者が悪用する可能性に対する対応装置が備えられていない」と強く批判している。

〇韓国外国語大学のチョん・ジンソク名誉教授は「朴正煕(パク・チョんヒ)政権時代もいわゆる『言論倫理委員会法』により、間違っている報道や気にいらない報道をしたメディアに新聞用紙供給を減らしたり、融資を制限したりして不利益を被らせようとしたが、新聞関係者や記者たちの反対で頓挫したことがあった」「今の与党は厳しい軍事政権でもしなかったことをしている」と与党を批判している。

〇ソウル大学言論情報学科のユン・ソンミン教授は「言論仲裁法改正案という名称をつけてはいるが、実際は文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足当初から作ろうとしていた『フェイクニュース規制法』だ」と、意にそぐわない報道を「フェイクニュース」と規定して罰する意図があると主張している――。

 ざっとこんな内容だ。

 もしこのような言論統制が行われるとしたら、韓国はもう「民主国家」とは言えない。これまでも「ネロナンブル(自分たちがやればロマンス、他人がやれば不倫)」というダブルスタンダードを都合よく振り回してきた文在寅政権であるが、もはやネロナンブルくらいでは自身を正当化できないところまで来たということなのか。

 国策を誤って国の安全保障を脅かし、経済政策の稚拙さから国民の生活を困窮化させ、文在寅大統領とその周辺の高官が利権に群がり不道徳行為を積み重ねてきた。その実態を暴かれることを恐れるあまり、軍事政権ですら手を付けなかった言論統制に乗り出すつもりなのか。

文政権を批判する者、許されず
 すでに文在寅政権はあらゆる手を使って「批判封殺」に躍起になっている。そして当然ながら、それに強く反発する人々もいる。

 8月11日、文政権を批判したことで罷免された元文化体育観光部の韓民鎬(ハン・ミンホ)元局長が罷免取り消しを求めた訴訟で、ソウル行政裁判所は原告の主張を認め、罷免を取り消した。

 韓氏が罷免されたのは、個人のSNSに文在寅政権を批判する記述を繰り返し載せたからだ。

 韓氏は外交政策についてSNSで「同盟をないがしろにすれば、国が滅ぶ」「70年前の慰安婦問題に対する関心の100分の1でも北朝鮮の女性たちの人権蹂躙に振り向けるべきだ」と主張していた。

「文政権は国を滅ぼすようなことばかりをやっている」
 また韓氏は「中央日報」の取材に対し、「文政権が国を滅ぼすようなことばかりをやっていると判断した。大きく3つあった。中小企業従事者を死地に追い込む所得主導成長政策、役に立たない反日扇動、産業を殺す脱原発が最も間違っていると考えた」という。

 韓元局長の言い分は、筆者が聞いても至極まっとうな内容である。決して虚偽・偽りを述べたわけでもないし、機密情報を流出させたわけでもない。自分の良心に従い自身の意見を述べたまでだ。それで懲戒罷免されるというのは、あまりに行き過ぎた措置だと思う。

 韓氏を罷免した人事革新中央懲戒委員会によれば、懲戒処分を行った理由は国家公務員法で定められた誠実義務と品位維持義務への違反だという。しかし、韓氏によれば、2017年に同部の書記官(筆者注:課長クラス)以下の後輩へのアンケート調査の中で〈最も望ましくて真似したい管理者〉に韓氏が選ばれたのだという。韓氏は「品位維持義務違反は言いがかりに近かった」と述べている。

 もう一つの「誠実義務違反」のほうは、要するに「政府の言うこと、やることを批判するな」という趣旨であろう。

 韓氏は昨年8月から中国の孔子学院の実態を知らせる運動本部の代表として、中国の文化工程を批判する市民運動をしている。これが文在寅政権の逆鱗に触れていた可能性もある。

 一般論でいえば、公務員が時の政権を露骨に批判することの是非の問題はある。批判したければ退職してから批判すればいい、という意見もあろう。ただ、韓元局長が批判したのは自身の関与しない問題であり、あくまでも個人的な意見と見ることもできる。

 進歩派系の観点からの政府批判は労働組合が守ってくれる。政府の不正行為に対する内部告発は世論が支持してくれることもある。しかし、政府の政策について、中央省庁の幹部が公に批判することは認められない、と考える政権中枢の人間も多いだろう。だとしても、罷免はやりすぎだ。

 いずれにせよ今回の措置には、韓元局長のような政府批判の発言を許さないという文政権の確固たる意志が反映されている。これでは政権内部での自由、闊達な議論は望めず、より効果的な政策実現の機会も失われていくことになるだろう。

 さらに与党が推進する「言論仲裁法改正案」が成立すれば、韓国ではますます政府批判が難しくなる。言論の自由のない暗黒国家になってしまうだろう。

文大統領への批判は「不適切行為」
 韓国の「暗黒国家化」は冗談でもなんでもない。文在寅大統領は自身に対する批判には猛然と噛みつくのだ。

 次期大統領選に野党「国民の力」の有力候補となっている崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長が、メディアから突如として「親日派」のレッテルを貼られ、苦境に立たされた。「親日」の根拠は、崔前院長の祖父である崔ビョンギュ氏(故人)が1937年に朝鮮総督府の地方諮問団体である江原道会(江原道議会に相当)議員に出馬して落選した後、1939年に旧満州国の牡丹江省海林で朝鮮居留民団団長を務めていたことだという。

 これに対し、崔前院長は「特定の職に就いていたからといって親日と定義することはできない。そのような論議ならば農業係長をしていた文在寅大統領の父親も親日派論議から抜け出すことはできない」と応じた。

 この崔院長の発言に対し、文大統領サイドが猛烈に噛みついた。大統領府青瓦台の朴ギョン美(パク・ギョンミ)報道官は10日の会見で「崔前院長が、文大統領の父親が興南で農業係長をしていたことも親日派論議から抜け出せないと言及した。崔前院長側が本人の議論を釈明しながら大統領を引き込んだことは大統領候補として非常に不適切な行動であることを肝に銘じるよう望む」と述べた。報道官の発言は大統領の指示に基づく発言だという。

 別の青瓦台の高官は「崔前院長のファクトと一致しない言及、不適切に大統領を引き込んだ側面に対して遺憾を表明し、不適切な行動を指摘したもの」と批判した。

文大統領の父親の「親日疑惑」を提起した野党幹部に猛反論
 文大統領の父、文龍炯(ムン・ヨンヒョン)氏は、日本統治時代に興南の役場で農業係長を務め、50年の国連統治下で農業課長を務めたようである。高校を卒業していたというから当時としてはエリートだった。中産階級だったとすれば親日疑惑が生じる。

 中産階級出身でなくとも、太平洋戦争が勃発して戦時総動員体制を整えた日本統治下の朝鮮半島では食糧供出などが行われたが、農業関連の公務員は、穀物を収奪して日本に提供する任務を担っていた。

 こうした履歴を見れば、文在寅大統領の父親は立派な「親日」分子であろう。少なくとも、韓国における“定義”としてはそうなる。

 しかし、大統領就任以来、「親日排除」を進めてきた文在寅氏としてはこの「事実」を突きつけられることは致命的である。そのため直ちに崔前院長の言論封じに出たのだろう。

 与党「共に民主党」も文在寅大統領の言論封じにすぐさま呼応した。姜炳遠(カン・ビョンウォン)最高委員が崔前院長に対し「自身を任命した任命権者に対し亡くなった父親を親日派として言及したのは最小限の人間的道理すら放棄したもの。大統領候補なのか、ならず者なのかこんがらかる」と言葉厳しく批判したのだ。

 これではまるで「文政権側は何を言ってもいい、反文政権側は言論を自制せよ」と言っているようなものではないか。与党の最高委員がわざわざ参戦し、「言論封じ」に乗り出するところは実に文在寅政権らしい。

北朝鮮の挑発発言には反論できないのに
 このように、自分たちに向かってくる者には容赦ない過剰な反撃を加え、メディアの言論封殺までしようという文在寅政権と与党「共に民主党」なのだが、北朝鮮に対しては相変わらず「ダンマリ」だ。

 前々回の寄稿でも触れたが、8月1日に北朝鮮の金与正・朝鮮労働党副部長が米韓合同演習の中止を求める談話を発表すると、これを受けて韓国の与党・民主党と進歩系の議員74人は、これに応じるよう求める連判状を作成して政府に提出、文在寅政権は米朝の間に入ってやむなく演習の縮小ということでお茶を濁した。

(参考)米韓合同軍事演習「規模縮小」で北朝鮮の「許し」を乞う文在寅
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66404

 しかし、北朝鮮はそれでは満足しなかった。10日に規模を縮小した形で米韓合同軍事演習が始まると、すぐさま金与正副部長が談話を発表、「在韓米軍の撤収」を要求し、「安保脅威」などという言葉を発して軍事挑発を予告した。

米韓合同軍事演習の「中止」や朝鮮半島からの「米軍撤退」を要求する北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長。写真は2019年3月のベトナム訪問時のもの(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 さらに文政権が「金正恩国務委員長と合意した」として回復した南北間の通信連絡線についても、「南朝鮮当局者の背信的仕打ちだ」として10日午後から定時通話に応じていない。

 ではこの状況に韓国政府はどういう姿勢を示したのか。

 やはりというべきか、お決まりの「状況を鋭意注視する」との言葉を繰り返すだけなのである。青瓦台は特別なコメントを出していない。北朝鮮が米韓同盟に亀裂を生じさせ、さらに内政干渉まで行っているにもかかわらず、緊急の国家安全保障会議(NSC)さえ招集していない。

 北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長は11日に発表した談話の中で、「わが国家を敵として行う戦争演習をまたもや繰り広げる狂気を振るい始めた」と述べた。韓国は自国の安全保障のための演習を最小限の規模で行おうとしているだけだ。それを「狂気」と罵られたのに、何ら反発していない。

 事実上の更迭となった日本の相馬弘尚・前駐韓公使が、文在寅大統領の外交駆け引きのことを「マスターベーションをしている」とした発言が適切だったかどうかは別として、その発言の直後に韓国が同公使の解任を求めたのとはずいぶん対応が違う。「日本に対してはいくら強く出てもいいが、北朝鮮には追従する」という文政権の基本的なスタンスが、ここにもにじみ出ている。

次期外交院長の「北朝鮮寄り」発言は文在寅政権の本音か

 文在寅大統領周辺の人々の、北朝鮮寄りの態度はあまりにも常識を逸している。

 例えば、国立外交院の次期院長の発言も最近物議をかもしている。

 洪鉉翼(ホン・ヒョンイク)次期院長は8月10日にラジオ番組に出演し、北朝鮮のミサイル・長射程砲発射に関連して「挑発とは言えないだろう」「韓国は訓練するのに北朝鮮は訓練したら駄目だと考えるのは常識的ではない」と述べた。

 同氏はかつて「在韓米軍は過度に配備されているので、1万人ほど削減するよう提案すべきだ」と述べていたことも明らかになっている。



 果たしてこれが韓国政府の北朝鮮に対するスタンスなのだろうか。国立外交院長は新任の外交官の養成、外交安全保障政策の研究に責任を持つシンクタンクのトップだ。その院長にこのような偏った認識を有する人物を抜擢することが国益に合致すると文在寅氏は考えているのだろうか。

 こうした人物で文政権が固められているから、罷免された韓元局長のように、自身の所管と関係のないところでも批判する公務員が出てくるのである。いわば義憤に駆られての発言だ。

 そうした発言をことごとく踏みつぶすような体制に韓国政府は変貌しつつある。そのような言論弾圧をしなければ、文在寅政権はもう持たないところまで来ているのであろうか。


文在寅が本気の言論統制

正気なのか、韓国・文在寅政権が本気で「言論統制」に乗り出した



民主主義国家では考えられない言論統制に本気で乗り出した文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)


(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 自分たちの気に入らない言論に対しては「虚偽・操作報道だ」と決めつけて弾圧し、北朝鮮の挑発や妄言に対しては「状況を鋭意注視している」としか言わない文在寅政権と与党。そんな国になりかけている韓国は「言論統制」が日常的になされる社会主義国と何ら変わらない国家になってしまったのか。北朝鮮が思い通りに操れる国になってしまったのか――。

与党が進める言論統制、違反したメディアには厳罰
「朝鮮日報」は8月12日付で、〈「言論懲罰法、朴正煕軍事政権も作ろうとしたが撤回」 野党はもちろん、保守・進歩とも反対〉と題する記事を掲載した。これは韓国の言論の自由に大きな制約を課し、韓国社会を軍国主義国、社会主義国のような国に変貌させかねない危険な立法である。まずはその記事の要旨を紹介しよう。

〇与党・共に民主党が推進する「言論仲裁法改正案」について、野党・国民の力はもちろん、与党系の正義党をはじめ、言論・市民団体、学界、法曹界など、保守派か進歩派かを問わず、あちこちから反対の声が相次いでいる。それでも与党は11日、「当初の計画通り25日の国会本会議で改正案を処理する」という。

〇今回の改正案は、法律で「虚偽・操作報道」を規定し、これに対し被害額の最大5倍までの懲罰的賠償を報道機関に課す条項を盛り込んでおり、「批判するマスメディアを事実上無力化させ、表現と言論の自由を抑圧し、政治・経済の権力者が言論にくつわをはめる恐れがある」と批判されている。

〇この法律は「政治・経済権力が悪用する」恐れがあり、「軍事政権でもできなかった発想である」。親与党系団体の民主言論市民連合でさえ「権力者が悪用する可能性に対する対応装置が備えられていない」と強く批判している。

〇韓国外国語大学のチョん・ジンソク名誉教授は「朴正煕(パク・チョんヒ)政権時代もいわゆる『言論倫理委員会法』により、間違っている報道や気にいらない報道をしたメディアに新聞用紙供給を減らしたり、融資を制限したりして不利益を被らせようとしたが、新聞関係者や記者たちの反対で頓挫したことがあった」「今の与党は厳しい軍事政権でもしなかったことをしている」と与党を批判している。

〇ソウル大学言論情報学科のユン・ソンミン教授は「言論仲裁法改正案という名称をつけてはいるが、実際は文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足当初から作ろうとしていた『フェイクニュース規制法』だ」と、意にそぐわない報道を「フェイクニュース」と規定して罰する意図があると主張している――。

 ざっとこんな内容だ。

 もしこのような言論統制が行われるとしたら、韓国はもう「民主国家」とは言えない。これまでも「ネロナンブル(自分たちがやればロマンス、他人がやれば不倫)」というダブルスタンダードを都合よく振り回してきた文在寅政権であるが、もはやネロナンブルくらいでは自身を正当化できないところまで来たということなのか。

 国策を誤って国の安全保障を脅かし、経済政策の稚拙さから国民の生活を困窮化させ、文在寅大統領とその周辺の高官が利権に群がり不道徳行為を積み重ねてきた。その実態を暴かれることを恐れるあまり、軍事政権ですら手を付けなかった言論統制に乗り出すつもりなのか。

文政権を批判する者、許されず
 すでに文在寅政権はあらゆる手を使って「批判封殺」に躍起になっている。そして当然ながら、それに強く反発する人々もいる。

 8月11日、文政権を批判したことで罷免された元文化体育観光部の韓民鎬(ハン・ミンホ)元局長が罷免取り消しを求めた訴訟で、ソウル行政裁判所は原告の主張を認め、罷免を取り消した。

 韓氏が罷免されたのは、個人のSNSに文在寅政権を批判する記述を繰り返し載せたからだ。

 韓氏は外交政策についてSNSで「同盟をないがしろにすれば、国が滅ぶ」「70年前の慰安婦問題に対する関心の100分の1でも北朝鮮の女性たちの人権蹂躙に振り向けるべきだ」と主張していた。

「文政権は国を滅ぼすようなことばかりをやっている」
 また韓氏は「中央日報」の取材に対し、「文政権が国を滅ぼすようなことばかりをやっていると判断した。大きく3つあった。中小企業従事者を死地に追い込む所得主導成長政策、役に立たない反日扇動、産業を殺す脱原発が最も間違っていると考えた」という。

 韓元局長の言い分は、筆者が聞いても至極まっとうな内容である。決して虚偽・偽りを述べたわけでもないし、機密情報を流出させたわけでもない。自分の良心に従い自身の意見を述べたまでだ。それで懲戒罷免されるというのは、あまりに行き過ぎた措置だと思う。

 韓氏を罷免した人事革新中央懲戒委員会によれば、懲戒処分を行った理由は国家公務員法で定められた誠実義務と品位維持義務への違反だという。しかし、韓氏によれば、2017年に同部の書記官(筆者注:課長クラス)以下の後輩へのアンケート調査の中で〈最も望ましくて真似したい管理者〉に韓氏が選ばれたのだという。韓氏は「品位維持義務違反は言いがかりに近かった」と述べている。

 もう一つの「誠実義務違反」のほうは、要するに「政府の言うこと、やることを批判するな」という趣旨であろう。

 韓氏は昨年8月から中国の孔子学院の実態を知らせる運動本部の代表として、中国の文化工程を批判する市民運動をしている。これが文在寅政権の逆鱗に触れていた可能性もある。

 一般論でいえば、公務員が時の政権を露骨に批判することの是非の問題はある。批判したければ退職してから批判すればいい、という意見もあろう。ただ、韓元局長が批判したのは自身の関与しない問題であり、あくまでも個人的な意見と見ることもできる。

 進歩派系の観点からの政府批判は労働組合が守ってくれる。政府の不正行為に対する内部告発は世論が支持してくれることもある。しかし、政府の政策について、中央省庁の幹部が公に批判することは認められない、と考える政権中枢の人間も多いだろう。だとしても、罷免はやりすぎだ。

 いずれにせよ今回の措置には、韓元局長のような政府批判の発言を許さないという文政権の確固たる意志が反映されている。これでは政権内部での自由、闊達な議論は望めず、より効果的な政策実現の機会も失われていくことになるだろう。

 さらに与党が推進する「言論仲裁法改正案」が成立すれば、韓国ではますます政府批判が難しくなる。言論の自由のない暗黒国家になってしまうだろう。

文大統領への批判は「不適切行為」
 韓国の「暗黒国家化」は冗談でもなんでもない。文在寅大統領は自身に対する批判には猛然と噛みつくのだ。

 次期大統領選に野党「国民の力」の有力候補となっている崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長が、メディアから突如として「親日派」のレッテルを貼られ、苦境に立たされた。「親日」の根拠は、崔前院長の祖父である崔ビョンギュ氏(故人)が1937年に朝鮮総督府の地方諮問団体である江原道会(江原道議会に相当)議員に出馬して落選した後、1939年に旧満州国の牡丹江省海林で朝鮮居留民団団長を務めていたことだという。

 これに対し、崔前院長は「特定の職に就いていたからといって親日と定義することはできない。そのような論議ならば農業係長をしていた文在寅大統領の父親も親日派論議から抜け出すことはできない」と応じた。

 この崔院長の発言に対し、文大統領サイドが猛烈に噛みついた。大統領府青瓦台の朴ギョン美(パク・ギョンミ)報道官は10日の会見で「崔前院長が、文大統領の父親が興南で農業係長をしていたことも親日派論議から抜け出せないと言及した。崔前院長側が本人の議論を釈明しながら大統領を引き込んだことは大統領候補として非常に不適切な行動であることを肝に銘じるよう望む」と述べた。報道官の発言は大統領の指示に基づく発言だという。

 別の青瓦台の高官は「崔前院長のファクトと一致しない言及、不適切に大統領を引き込んだ側面に対して遺憾を表明し、不適切な行動を指摘したもの」と批判した。

文大統領の父親の「親日疑惑」を提起した野党幹部に猛反論
 文大統領の父、文龍炯(ムン・ヨンヒョン)氏は、日本統治時代に興南の役場で農業係長を務め、50年の国連統治下で農業課長を務めたようである。高校を卒業していたというから当時としてはエリートだった。中産階級だったとすれば親日疑惑が生じる。

 中産階級出身でなくとも、太平洋戦争が勃発して戦時総動員体制を整えた日本統治下の朝鮮半島では食糧供出などが行われたが、農業関連の公務員は、穀物を収奪して日本に提供する任務を担っていた。

 こうした履歴を見れば、文在寅大統領の父親は立派な「親日」分子であろう。少なくとも、韓国における“定義”としてはそうなる。

 しかし、大統領就任以来、「親日排除」を進めてきた文在寅氏としてはこの「事実」を突きつけられることは致命的である。そのため直ちに崔前院長の言論封じに出たのだろう。

 与党「共に民主党」も文在寅大統領の言論封じにすぐさま呼応した。姜炳遠(カン・ビョンウォン)最高委員が崔前院長に対し「自身を任命した任命権者に対し亡くなった父親を親日派として言及したのは最小限の人間的道理すら放棄したもの。大統領候補なのか、ならず者なのかこんがらかる」と言葉厳しく批判したのだ。

 これではまるで「文政権側は何を言ってもいい、反文政権側は言論を自制せよ」と言っているようなものではないか。与党の最高委員がわざわざ参戦し、「言論封じ」に乗り出するところは実に文在寅政権らしい。

北朝鮮の挑発発言には反論できないのに
 このように、自分たちに向かってくる者には容赦ない過剰な反撃を加え、メディアの言論封殺までしようという文在寅政権と与党「共に民主党」なのだが、北朝鮮に対しては相変わらず「ダンマリ」だ。

 前々回の寄稿でも触れたが、8月1日に北朝鮮の金与正・朝鮮労働党副部長が米韓合同演習の中止を求める談話を発表すると、これを受けて韓国の与党・民主党と進歩系の議員74人は、これに応じるよう求める連判状を作成して政府に提出、文在寅政権は米朝の間に入ってやむなく演習の縮小ということでお茶を濁した。

(参考)米韓合同軍事演習「規模縮小」で北朝鮮の「許し」を乞う文在寅
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66404

 しかし、北朝鮮はそれでは満足しなかった。10日に規模を縮小した形で米韓合同軍事演習が始まると、すぐさま金与正副部長が談話を発表、「在韓米軍の撤収」を要求し、「安保脅威」などという言葉を発して軍事挑発を予告した。

米韓合同軍事演習の「中止」や朝鮮半島からの「米軍撤退」を要求する北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長。写真は2019年3月のベトナム訪問時のもの(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 さらに文政権が「金正恩国務委員長と合意した」として回復した南北間の通信連絡線についても、「南朝鮮当局者の背信的仕打ちだ」として10日午後から定時通話に応じていない。

 ではこの状況に韓国政府はどういう姿勢を示したのか。

 やはりというべきか、お決まりの「状況を鋭意注視する」との言葉を繰り返すだけなのである。青瓦台は特別なコメントを出していない。北朝鮮が米韓同盟に亀裂を生じさせ、さらに内政干渉まで行っているにもかかわらず、緊急の国家安全保障会議(NSC)さえ招集していない。

 北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長は11日に発表した談話の中で、「わが国家を敵として行う戦争演習をまたもや繰り広げる狂気を振るい始めた」と述べた。韓国は自国の安全保障のための演習を最小限の規模で行おうとしているだけだ。それを「狂気」と罵られたのに、何ら反発していない。

 事実上の更迭となった日本の相馬弘尚・前駐韓公使が、文在寅大統領の外交駆け引きのことを「マスターベーションをしている」とした発言が適切だったかどうかは別として、その発言の直後に韓国が同公使の解任を求めたのとはずいぶん対応が違う。「日本に対してはいくら強く出てもいいが、北朝鮮には追従する」という文政権の基本的なスタンスが、ここにもにじみ出ている。

次期外交院長の「北朝鮮寄り」発言は文在寅政権の本音か

 文在寅大統領周辺の人々の、北朝鮮寄りの態度はあまりにも常識を逸している。

 例えば、国立外交院の次期院長の発言も最近物議をかもしている。

 洪鉉翼(ホン・ヒョンイク)次期院長は8月10日にラジオ番組に出演し、北朝鮮のミサイル・長射程砲発射に関連して「挑発とは言えないだろう」「韓国は訓練するのに北朝鮮は訓練したら駄目だと考えるのは常識的ではない」と述べた。

 同氏はかつて「在韓米軍は過度に配備されているので、1万人ほど削減するよう提案すべきだ」と述べていたことも明らかになっている。



 果たしてこれが韓国政府の北朝鮮に対するスタンスなのだろうか。国立外交院長は新任の外交官の養成、外交安全保障政策の研究に責任を持つシンクタンクのトップだ。その院長にこのような偏った認識を有する人物を抜擢することが国益に合致すると文在寅氏は考えているのだろうか。

 こうした人物で文政権が固められているから、罷免された韓元局長のように、自身の所管と関係のないところでも批判する公務員が出てくるのである。いわば義憤に駆られての発言だ。

 そうした発言をことごとく踏みつぶすような体制に韓国政府は変貌しつつある。そのような言論弾圧をしなければ、文在寅政権はもう持たないところまで来ているのであろうか。



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