旧統合進歩党出身者らが主軸となっている「李石基（イ・ソッキ）救命委員会」が、同党議員だった李受刑者の再審を今月中にも請求する予定だと表明した。李受刑者を巡っては、2015年に大法院（最高裁に相当）で内乱扇動の罪により懲役9年の刑が確定したが、この判決は朴槿恵（パク・クンへ）政権と大法院の「裁判取引」によるものであって取り消されるべき、というのだ。同委は、前大法院長時代に法院行政処が作った文書で李受刑者の事件が司法府の国政協力事例に挙げられていたことを「取引」の証拠だと言っている。

　李受刑者に対する大法院判決は、行政処の文書が作成される6カ月前に出た。既に終わった裁判を持ち出して、何の取引だというのか。しかも大法院判決は、より処罰が重い内乱陰謀は無罪として内乱扇動を有罪とした二審の判断および量刑をそのまま確定させたものだ。一審は内乱陰謀を有罪と判断し、懲役12年を言い渡した。取引があったのなら、こうなるだろうか。にもかかわらず統合進歩党勢力は、大法院が大統領府（青瓦台）の顔色をうかがって裁判を行ったとこじつけている。再審は、捜査機関が提出した証拠が捏造（ねつぞう）されていたり、結論を覆すだけの新証拠が出たりしたときに行われるものだ。

　統合進歩党と李受刑者の事件は、法が定めた手続きに従って捜査と裁判が行われた。検察による適法な捜査と政党解散請求、弁論権の保障など、民主的手続きを踏んで民主主義の敵を断罪し、法治を守ったのだ。ところが現政権発足後、統合進歩党勢力や一部の左派勢力は、李受刑者を良心囚として持ち上げたり「法治破壊」「政治工作の被害者」と主張したりして、執拗（しつよう）に釈放を要求している。「李石基釈放」デモに参加した全国民主労働組合総連盟（民労総）の委員長は、李受刑者をたたえて「独立闘士」と呼び、李受刑者に人権賞を与えた団体もあった。民主主義制度を利用した民主主義の破壊とは、まさにこういうものだ。

　いわゆる「司法行政権乱用」疑惑に関する検察の捜査が行われる前から判決への不服が唱えられ続け、司法府が満身創痍（そうい）になるという懸念は小さくなかった。大法院長は、繰り返し行われた裁判所の独自調査で「裁判取引を認めるに値する、いかなる資料や状況も見いだされなかった」という結論が出たにもかかわらず、これを無視して検察の捜査を押し付けた。その結果、事件当事者らが大法院占拠デモを繰り広げ、大法院長に火炎瓶を投げ付けるという事件まで起きた。とうとう、韓国の転覆を謀った勢力までもが判決への不服を扇動するありさまとなった。さらに大きな問題は、これは始まりにすぎない、という事実だ。