2014년 12월에 공개된 「우주 전함 야마토 2199 별 돌아 다니는 분 배」의 스탭 롤에 애니메이션 팬은 어수선했다.원화:암야히데아키라고 하는 크레디트에……「신·에반게리온 극장판」의 공개가 기다려지고 있는 한중간에, 뭐 합니까―！？
암야감독의 인생에 대해 「우주 전함 야마토」라고 하는 작품( 「2199」는 리메이크판)이 차지하는 중량감을 생각하면, 모두에 우선해 참가한 것은 당연한 일.「야마토가 없으면 지금의 자신은 없었다」 「야마토가 있었기 때문에 나는 애니메이션을 계속 볼 수 있었다」라고 한 취지의 발언을 반복해 있거나 한다.
© 익사이트 리뷰 제공
본서는, 그런 「우주 전함 야마토」를 만든 카리스마·프로듀서 니시자키의전의 전대미문의 일생을 남기는 곳(중) 없게 전하려고 하는 1권이다.
「우주 전함 야마토」는 1974~75년, 전26화가 방영된 텔레비전 시리즈의 SF애니메이션.재편집된 극장판은 1977년에 공개되어 흥행 수입 21억엔의 대히트.2 작목의 「안녕히 우주 전함 야마토사랑의 전사들」은 관객 동원수 400만명, 흥행 수입 43억엔과 전작으로부터 배증했다.「스타워즈(EP4)」가 흥행 수입 43억엔이었던 것이니까, 얼마나 굉장할 기세였는지 안다.
그 제작 총지휘를 한 니시자키의전은, 「기동전사 건담」의 토노유유계감독이 단지 한 명“적”으로 인정한 남자다.「야마토」의 제4화로 그림 콘티가 발주된 토노 감독이 시나리오를 통째로 고쳐 써 니시자키와 대싸움한 일화도 있지만, 그 만큼 강렬하게 의식하고 있던 반대다.「건담」의 기획을 시작했을 때도【타도 니시자키】를 가슴에, 스스로를 분발하게 하고 있었다고 말하고 있다.
애니메이션 업계에서 단지 한 명의 「개인 프로듀서」
니시자키는 개인으로서 끊은 혼자서 「야마토」의 제작 자금을 떠맡았다.돈을 내기 때문에, 현장에도 참견한다.일 있을 때 마다 회의를 여는 회의 매니아로, 스탭이 그림을 만들 시간이 없어지는 본말 전도상.캐릭터의 옷의 색이나 디자인까지 체크하므로, 현장의 스탭에게는 평판이 나빴다.「건담」을 지지한 작화의 거장·야스히코 요시카즈씨도, 이윽고 「야마토」에의 참가를 끊었을 정도다.
거기까지 제작에 빠져든 것은, 니시자키가 야마토를 마음속으로부터 사랑하고 있었기 때문이다.「전함을 우주에 날린다」라고 하는 발상은 전례가 있었지만, 그것을 만화로 그리는 것과 애니메이션으로 하는 것과는 크나큰 오류다.텔레비전 애니메이션은 제작 자금의 조달이나 프로그램의 테두리 잡기 등, 난이도가 자릿수 변두리에 비싸다.
야마토는 유성 폭탄에 의해 멸망해 걸친 지구를 구하기 위해서, 은하의 저쪽까지 방찬`히능을 제거하는 장치를 취하러 가는 드라마다.니시자키가 기획을 반입한 텔레비전국안에는 「지구가 파멸 하기 시작하는 이야기」에 거부 반응을 나타내는 담당자도 있었다고 한다.그것을 광고 대리점도 통하지 않고, 니시자키는 끈기에 달라붙어 통했다.권리를 대리점에 관련되어 놓치고 싶지 않은 계산과 표리이지만, 하이리턴 이전의 하이리스크를 개인으로 쓰는 프로듀서가 현대에 있을까.
「우주 전함 야마토」, 그것은 종래는 「애니메이션에서는 해선 안 되는 것」의 덩어리다.니시자키가 극작가나 브레인과 함께 만든 「원작」이며, 스폰서도 붙이지 않는 자기부담이니까, 끝까지 한다.본방송으로 시청률이 침체한 「야마토」는, 재방송으로 인기에 불이 붙었다고 말해지지만, 재방송의 팔아에 분주 했던 것도 니시자키그 사람이다.
선이 많은 전함을 움직이는 것만으로도 큰 일인데, 우주 공간에서 돌아 포함까지 시키는 것은 굉장한 작화 칼로리가 걸린다.게다가, 당시는 로봇 애니메이션의 전성기로, 메카가 능숙한 애니메이터도 부족했다.니시자키는 실력파를 한 명씩 설득하여 납득시켜, 시세부터 20~ 30%높은 개런티를 지불했다고 한다.
지금까지의 애니메이션을 「야마토 이전」으로 쫓아 버린 것이, 「은하 철도 999」로도 알려진 만화가·마츠모토 료지의 기용이었던 .우주에 깊이를 갖고 싶으면 바란 니시자키는, 마츠모토의 일러스트를 보여져 미술 설정 디자인에 기용.그 결과, 단번에 비주얼은 미래적이 되어, 상식 빗나가의 디티르를 얻었으니까, 마츠모토가 「감독」으로서 크레디트 되었다(실제의 연출은 「초시공 요새 마크로스」등의 이시구로 노보루) 것은 적당한 대우였다고 말할 수 있다.
섬세한 디티르 투성이의 화면을 「충분히 인 나무로 보여라」라고 말하는 니시자키의 지시는, 본인에게 무서운 코스트로 해서 튀어올라 온다.불심함과는 먼, 대해에 요동하는 잎과 같은 「야마토」프로젝트의 원작자는, 파멸의 위험함 맡은 니시자키라고 하지 않을 수 없다.
「야마토」는, 애니메이션 관련 비즈니스의 친부모이기도 하다.동지·미야가와 야스시의 명곡에 의해서 LP매상은 38만 6천매에 올라, 「아나운서와 눈의 여왕」의 CD매상에 뽑아질 때까지는 애니메이션 영화의 역대 톱을 지켰다.한층 더 치밀하게 설정된 「야마토」는1/700의 스케일 모델을 만들기 쉽고, 플라모델도 대히트.벼랑에 있던 반다이 모형도 소생해, 건담 플라모델=암 플라스틱으로 연결되었던 것이다.
하루카 먼 곳에서 빛나는 별, 친밀한 사람들에게는 암흑의 블랙 홀
「 「우주 전함 야마토」를 만든 남자 니시자키의전의 광기」에서는 신규의 인터뷰는 없고, 증언의 대부분은 다른 자료로부터 인용된 것이다.본서의 진정한 매력은, 공저자인 야마다 아키라구—「야마토」의 제작 조수를 5년 근무한 인물이 지문으로 말하는 「나마의 니시자키의 삶」에 있다.
외가의 조모는 해군 대장, 아버지의 여동생은 니시자키류의 당주·니시자키 미도리.이시하라 신타로마저 부러워하는 명가의 니시자키는 도쿄대학 진학에 좌절 해 아버지로부터 의절되었다.그 다음은 재즈 끽다의 사회로부터 음악 제작 프로듀서가 되어, 오피스·아카데미를 설립해 창가학회계의 민음(민주 음악 협회)의 이벤트로 돈을 벌지만, 빚을 너무 만들어서 해외에 도망.
이윽고 일본에 돌아오는이나 데즈카 오사무의 매니저가 되어, 관련 회사의 벌레 프로 상사에서 「이상한 메르모」의 애니메이션화 등에 랄 솜씨를 발휘했다.그러나 무리한 방식으로 인심은 멀어진 후에, 벌레프 로 상사의 경영 재건도 실패.테즈카로부터 「바다의 새 톤」의 권리를 인같게 애니메이션화해, 작품을 맡은 토노 감독도 당분간 테즈카와 소원하게 되는 트밧치리를 먹었다.
빚은 밟아 쓰러 뜨려, 만화의 신과도 사라지지 않는 유한을 남긴다.이런 쓸모없는 사람의 악당이 아니면, 아이해라고 생각되고 있던 애니메이션을 거대 산업으로 하려고는 생각하지 않았을 것이다.산전수전의 음악 업계를 마음대로 다룬 말도 잘하고 일 솜씨도 좋음이 있었기 때문에, 「야마토」에 부어 넣어진 자릿수 빗나가의 자금도 조달할 수 있었을 것이다.지금의 애니메이션 비즈니스는, 악덕 투성이의 욕망과 작품 만들기에의 순수한 구상을 모순 없게 가질 수 있던, 한 개의 괴물이 연 길 위에 있다.
목립꾸중으로 대등 불어, 돈에 더럽게 여자도 참 해.극장판의 「안녕히」에서는 야마토를 초거대 전함에 특공 시켜 「 이제(벌써), 두 번 다시 모습을 나타낼 것은 없습니다」라는 텔롭을 흘려 두고, 그 텔레비전판인 「우주 전함 야마토 2」에서는 결말을 개변해 주인공들을 살아 남게 해 팬을 격노시켰다.「야마토」의 말절을 엉망으로 한 니시자키의 추태를, 이 책은 있는 그대로에 기록하고 있다.
단지, 「너무 얻어맞았다 」사실도 냉정하게 지적되고 있다.만년의 각성제 소지는 「야마토」제작전`유모등의 숨돌리기로, 중증의 의존증은 아니었다고 한다.그리고 배로부터 그레네이드란챠 첨부 그런데도 전혀 보충이 되지 않은 생각도 들지만, 마츠모토 료지가 「야마토」의 저작권을 둘러싸고 니시자키를 호소한 재판의 내리막은 필독이다.나중에 참가한 마츠모토가 「원작자」라고 주장하는 것은 너무 한 감도 있지만, 그도 또 니시자키에 마음을 유린해진( 「안녕히」로의 특공에 마츠모토는 반대하고 있던) 혼자서 있어, 한화살 보답하고 싶었던 심정은 안다.지금의 애니메이션 업계에 기운이 없는 것도, 니시자키와 같은 「악인」이 부재의 탓인지도……라고 하는 것은 간단하지만, 블랙 홀의 근처에 있는 스탭은 쌓인 것이 아니지요.
(타네 키요시)
『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』
西崎をひとことで言うなら「個人プロデューサー」だ。後にも先にも、国内のアニメ業界ではたったの一人しかいない。アニメ制作には莫大な資金と人手がかかるため、まずスポンサーや広告代理店など組織のバックアップを取り付ける。今の主流である製作委員会方式も、資金リスクを分散し、出資比率に応じて利益を分配するというもの。
西崎は個人として、たった一人で「ヤマト」の制作資金を背負い込んだ。カネを出すから、現場にも口を出す。事あるごとに会議を開く会議マニアで、スタッフが作画する時間がなくなる本末転倒ぶり。キャラクターの服の色やデザインまでチェックするので、現場のスタッフには評判が悪かった。「ガンダム」を支えた作画の巨匠・安彦良和氏も、やがて「ヤマト」への参加を断ったほどだ。
そこまで制作にのめり込んだのは、西崎がヤマトを心の底から愛していたからだ。「戦艦を宇宙に飛ばす」という発想は前例があったが、それを漫画で描くのと、アニメにするのとは大違いだ。テレビアニメは制作資金の調達や番組の枠取りなど、難易度がケタ外れに高い。
ヤマトは遊星爆弾により滅びかけた地球を救うために、銀河のかなたまで放射能を除去する装置を取りに行くドラマだ。西崎が企画を持ち込んだテレビ局の中には「地球が破滅しかける話」に拒否反応を示す担当者もいたという。それを広告代理店も通さず、西崎は粘りに粘って通した。権利を代理店に絡め取られたくない計算と裏表だが、ハイリターン以前のハイリスクを個人でかぶるプロデューサーが現代にいるだろうか。
『宇宙戦艦ヤマト』、それは従来は「アニメではやってはいけないこと」の塊だ。西崎が脚本家やブレーンと共につくった「原作」であり、スポンサーも付けない自腹だから、とことんまでやる。本放送で視聴率が低迷した「ヤマト」は、再放送で人気に火がついたと言われるが、再放送の売り込みに奔走したのも西崎その人だ。
線の多い戦艦を動かすだけでも大変なのに、宇宙空間で回り込みまでさせるのは凄まじい作画カロリーがかかる。しかも、当時はロボットアニメの全盛期で、メカが上手いアニメーターも不足していた。西崎は実力派を一人ずつ口説き落とし、相場より20〜30%高いギャラを払ったという。
それまでのアニメを「ヤマト以前」へと追いやったのが、『銀河鉄道９９９』でも知られる漫画家・松本零士の起用だった。宇宙に奥行きがほしいと望んだ西崎は、松本のイラストを見せられて美術設定デザインに起用。その結果、一気にビジュアルは未来的となり、常識外れのディティールを得たのだから、松本が「監督」としてクレジットされた(実際の演出は『超時空要塞マクロス』などの石黒昇)のは相応しい待遇だったといえる。
細かなディティールだらけの画面を「たっぷり引きで見せろ」という西崎の指示は、本人に恐るべきコストとして跳ね返ってくる。不沈艦とは程遠い、大海に揺らぐ葉っぱのような「ヤマト」プロジェクトの原作者は、破滅の危険さえ引き受けた西崎といわざるを得ない。
「ヤマト」は、アニメ関連ビジネスの生みの親でもある。盟友・宮川泰の名曲によってLP売上は38万6千枚に上り、『アナと雪の女王』のCD売上に抜かれるまではアニメ映画の歴代トップを守った。さらに緻密に設定された「ヤマト」は1/700のスケールモデルを作りやすく、プラモデルも大ヒット。崖っぷちにいたバンダイ模型も息を吹き返し、ガンダムプラモデル=ガンプラへと繋がったのだ。
西崎は遠くで輝く星であり、身近な人達を不幸に巻き込むブラックホールだ。彼は決して善人ではなく、普通の感覚でいえば悪人だった。「さらば」のラストシーンについて部下に「お前は愛する人のためにしねるか」と厳しく問い詰めておいて、複数の愛人を抱えてることを隠しもしなかった男だ。
『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』では新規のインタビューはなく、証言のほとんどは他の資料から引用されたものだ。本書の真の魅力は、共著者である山田哲久−−「ヤマト」の制作助手を5年つとめた人物が地の文で語る「ナマの西崎の生き様」にある。
母方の祖母は海軍大将、父の妹は西崎流の家元・西崎緑。石原慎太郎さえうらやむ名家の西崎は東大進学に挫折して父から勘当された。その後はジャズ喫茶の司会から音楽制作プロデューサーとなり、オフィス・アカデミーを設立して創価学会系の民音(民主音楽協会)のイベントで儲けるが、借金を作りすぎて海外に逃亡。
やがて日本に戻って来るや手塚治虫のマネージャーとなり、関連会社の虫プロ商事で『ふしぎなメルモ』のアニメ化などに辣腕を振るった。しかし強引なやり方で人心は離れた上に、虫プロ商事の経営立て直しも失敗。手塚から『海のトリトン』の権利を引っぺがすようにアニメ化し、作品を任された富野監督もしばらく手塚と疎遠になるトバッチリを食らった。
借金は踏み倒し、漫画の神様とも消えない遺恨を残す。こんなろくでなしの悪党でなければ、子供だましと思われていたアニメをビッグビジネスにしようとは考えなかったろう。海千山千の音楽業界を手玉に取った口八丁手八丁があったから、「ヤマト」に注ぎこまれたケタ外れの資金も調達できたはずだ。今のアニメビジネスは、悪徳まみれの欲望と作品づくりへの純粋な想いを矛盾なく持てた、一個の怪物が切り開いた道の上にあるのだ。
目立ちたがりで大ぼら吹き、カネに汚く女ったらし。劇場版の『さらば』ではヤマトを超巨大戦艦に特攻させて「もう、二度と姿を現すことはありません」とのテロップを流しておいて、そのテレビ版である『宇宙戦艦ヤマト2』では結末を改変して主人公達を生き残らせてファンを激怒させた。「ヤマト」の末節を台無しにした西崎の醜態を、この本はありのままに記録している。
ただ、「叩かれすぎた」事実も冷静に指摘されている。晩年の覚せい剤所持は「ヤマト」制作当時からの息抜きで、重度の依存症ではなかったという。そして船からグレネードランチャー付それでもまるでフォローになってない気もするが、松本零士が「ヤマト」の著作権をめぐって西崎を訴えた裁判の下りは必読だ。後から参加した松本が「原作者」だと主張するのはやり過ぎた感もあるが、彼もまた西崎に心を踏みにじられた(「さらば」での特攻に松本は反対していた)一人であり、一矢報いたかった心情は分かる。今のアニメ業界に元気がないのも、西崎のような「悪人」が不在のせいかも……というのは簡単だが、ブラックホールの近くにいるスタッフはたまったもんじゃないですよね。
（多根清史）
2014年12月に公開された『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』のスタッフロールにアニメファンは騒然となった。原画:庵野秀明というクレジットに……『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開が待たれてる最中に、何やってるんですかー！？
庵野監督の人生において『宇宙戦艦ヤマト』という作品(「2199」はリメイク版)が占める重みを考えれば、全てに優先して参加したのは当たり前のこと。「ヤマトがなければ今の自分はなかった」「ヤマトがあったから僕はアニメを見続けることができた」といった趣旨の発言を繰り返していたりする。
© エキサイトレビュー 提供
本書は、そんな『宇宙戦艦ヤマト』をつくったカリスマ・プロデューサー西崎義展の破天荒な一生を余すところなく伝えようとする一冊だ。
『宇宙戦艦ヤマト』は1974〜75年、全26話が放映されたテレビシリーズのSFアニメ。再編集された劇場版は1977年に公開され、興行収入21億円もの大ヒット。2作目の『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』は観客動員数400万人、興行収入43億円と前作から倍増した。『スターウォーズ（EP4）』が興行収入43億円だったのだから、いかに凄まじい勢いだったか分かる。
その製作総指揮をした西崎義展は、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督がただ一人“敵”と認めた男だ。「ヤマト」の第四話で絵コンテを発注された富野監督がシナリオを丸ごと書き換えて西崎と大喧嘩した逸話もあるが、それだけ強烈に意識していた裏返しだ。「ガンダム」の企画を立ち上げたときも【打倒西崎】を胸に、自らを奮い立たせていたと語っている。
アニメ業界でただ一人の「個人プロデューサー」
西崎をひとことで言うなら「個人プロデューサー」だ。後にも先にも、国内のアニメ業界ではたったの一人しかいない。アニメ制作には莫大な資金と人手がかかるため、まずスポンサーや広告代理店など組織のバックアップを取り付ける。今の主流である製作委員会方式も、資金リスクを分散し、出資比率に応じて利益を分配するというもの。
西崎は個人として、たった一人で「ヤマト」の制作資金を背負い込んだ。カネを出すから、現場にも口を出す。事あるごとに会議を開く会議マニアで、スタッフが作画する時間がなくなる本末転倒ぶり。キャラクターの服の色やデザインまでチェックするので、現場のスタッフには評判が悪かった。「ガンダム」を支えた作画の巨匠・安彦良和氏も、やがて「ヤマト」への参加を断ったほどだ。
そこまで制作にのめり込んだのは、西崎がヤマトを心の底から愛していたからだ。「戦艦を宇宙に飛ばす」という発想は前例があったが、それを漫画で描くのと、アニメにするのとは大違いだ。テレビアニメは制作資金の調達や番組の枠取りなど、難易度がケタ外れに高い。
ヤマトは遊星爆弾により滅びかけた地球を救うために、銀河のかなたまで放射能を除去する装置を取りに行くドラマだ。西崎が企画を持ち込んだテレビ局の中には「地球が破滅しかける話」に拒否反応を示す担当者もいたという。それを広告代理店も通さず、西崎は粘りに粘って通した。権利を代理店に絡め取られたくない計算と裏表だが、ハイリターン以前のハイリスクを個人でかぶるプロデューサーが現代にいるだろうか。
『宇宙戦艦ヤマト』、それは従来は「アニメではやってはいけないこと」の塊だ。西崎が脚本家やブレーンと共につくった「原作」であり、スポンサーも付けない自腹だから、とことんまでやる。本放送で視聴率が低迷した「ヤマト」は、再放送で人気に火がついたと言われるが、再放送の売り込みに奔走したのも西崎その人だ。
線の多い戦艦を動かすだけでも大変なのに、宇宙空間で回り込みまでさせるのは凄まじい作画カロリーがかかる。しかも、当時はロボットアニメの全盛期で、メカが上手いアニメーターも不足していた。西崎は実力派を一人ずつ口説き落とし、相場より20〜30%高いギャラを払ったという。
それまでのアニメを「ヤマト以前」へと追いやったのが、『銀河鉄道９９９』でも知られる漫画家・松本零士の起用だった。宇宙に奥行きがほしいと望んだ西崎は、松本のイラストを見せられて美術設定デザインに起用。その結果、一気にビジュアルは未来的となり、常識外れのディティールを得たのだから、松本が「監督」としてクレジットされた(実際の演出は『超時空要塞マクロス』などの石黒昇)のは相応しい待遇だったといえる。
細かなディティールだらけの画面を「たっぷり引きで見せろ」という西崎の指示は、本人に恐るべきコストとして跳ね返ってくる。不沈艦とは程遠い、大海に揺らぐ葉っぱのような「ヤマト」プロジェクトの原作者は、破滅の危険さえ引き受けた西崎といわざるを得ない。
「ヤマト」は、アニメ関連ビジネスの生みの親でもある。盟友・宮川泰の名曲によってLP売上は38万6千枚に上り、『アナと雪の女王』のCD売上に抜かれるまではアニメ映画の歴代トップを守った。さらに緻密に設定された「ヤマト」は1/700のスケールモデルを作りやすく、プラモデルも大ヒット。崖っぷちにいたバンダイ模型も息を吹き返し、ガンダムプラモデル=ガンプラへと繋がったのだ。
はるか遠くで輝く星、身近な人々には暗黒のブラックホール
西崎は遠くで輝く星であり、身近な人達を不幸に巻き込むブラックホールだ。彼は決して善人ではなく、普通の感覚でいえば悪人だった。「さらば」のラストシーンについて部下に「お前は愛する人のためにしねるか」と厳しく問い詰めておいて、複数の愛人を抱えてることを隠しもしなかった男だ。
『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』では新規のインタビューはなく、証言のほとんどは他の資料から引用されたものだ。本書の真の魅力は、共著者である山田哲久−−「ヤマト」の制作助手を5年つとめた人物が地の文で語る「ナマの西崎の生き様」にある。
母方の祖母は海軍大将、父の妹は西崎流の家元・西崎緑。石原慎太郎さえうらやむ名家の西崎は東大進学に挫折して父から勘当された。その後はジャズ喫茶の司会から音楽制作プロデューサーとなり、オフィス・アカデミーを設立して創価学会系の民音(民主音楽協会)のイベントで儲けるが、借金を作りすぎて海外に逃亡。
やがて日本に戻って来るや手塚治虫のマネージャーとなり、関連会社の虫プロ商事で『ふしぎなメルモ』のアニメ化などに辣腕を振るった。しかし強引なやり方で人心は離れた上に、虫プロ商事の経営立て直しも失敗。手塚から『海のトリトン』の権利を引っぺがすようにアニメ化し、作品を任された富野監督もしばらく手塚と疎遠になるトバッチリを食らった。
借金は踏み倒し、漫画の神様とも消えない遺恨を残す。こんなろくでなしの悪党でなければ、子供だましと思われていたアニメをビッグビジネスにしようとは考えなかったろう。海千山千の音楽業界を手玉に取った口八丁手八丁があったから、「ヤマト」に注ぎこまれたケタ外れの資金も調達できたはずだ。今のアニメビジネスは、悪徳まみれの欲望と作品づくりへの純粋な想いを矛盾なく持てた、一個の怪物が切り開いた道の上にあるのだ。
目立ちたがりで大ぼら吹き、カネに汚く女ったらし。劇場版の『さらば』ではヤマトを超巨大戦艦に特攻させて「もう、二度と姿を現すことはありません」とのテロップを流しておいて、そのテレビ版である『宇宙戦艦ヤマト2』では結末を改変して主人公達を生き残らせてファンを激怒させた。「ヤマト」の末節を台無しにした西崎の醜態を、この本はありのままに記録している。
ただ、「叩かれすぎた」事実も冷静に指摘されている。晩年の覚せい剤所持は「ヤマト」制作当時からの息抜きで、重度の依存症ではなかったという。そして船からグレネードランチャー付それでもまるでフォローになってない気もするが、松本零士が「ヤマト」の著作権をめぐって西崎を訴えた裁判の下りは必読だ。後から参加した松本が「原作者」だと主張するのはやり過ぎた感もあるが、彼もまた西崎に心を踏みにじられた(「さらば」での特攻に松本は反対していた)一人であり、一矢報いたかった心情は分かる。今のアニメ業界に元気がないのも、西崎のような「悪人」が不在のせいかも……というのは簡単だが、ブラックホールの近くにいるスタッフはたまったもんじゃないですよね。
（多根清史）