序説
/jp/exchange/theme/read.php?uid=7225&fid=7225&thread=1000000&idx=1&page=2&tname=exc_board_11&number=3&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?uid=7260&fid=7260&thread=1000000&idx=1&page=2&tname=exc_board_11&number=4&f=name&word=pipe
天然痘
/jp/exchange/theme/read.php?uid=7292&fid=7292&thread=1000000&idx=1&page=2&tname=exc_board_11&number=6&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7318&fid=7318&thread=1000000&idx=1&page=2&number=7&f=name&word=pipe
チフス
/jp/exchange/theme/read.php?uid=7482&fid=7482&thread=1000000&idx=1&page=1&tname=exc_board_11&number=11&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7553&fid=7553&thread=1000000&idx=1&page=1&number=13&f=name&word=pipe
赤痢
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7605&fid=7605&thread=1000000&idx=1&page=1&number=14&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7653&fid=7653&thread=1000000&idx=1&page=1&number=15&f=name&word=pipe
コレラ
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7718&fid=7718&thread=1000000&idx=1&page=1&number=16&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7764&fid=7764&thread=1000000&idx=1&page=1&number=18&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7774&fid=7774&thread=1000000&idx=1&page=1&number=19&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7958&fid=7958&thread=1000000&idx=1&page=1&number=24&f=name&word=pipe
史料批判とか伝染病の外側とか
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7794&fid=7794&thread=1000000&idx=1&page=1&number=20&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7836&fid=7836&thread=1000000&idx=1&page=1&number=21&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7854&fid=7854&thread=1000000&idx=1&page=1&number=22&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7929&fid=7929&thread=1000000&idx=1&page=1&number=23&f=name&word=pipe
/jp/exchange/theme/read.php?tname=exc_board_11&uid=7998&fid=7998&thread=1000000&idx=1&page=1&number=25&f=name&word=pipe
序説０が３月６日。なんと４ヶ月にわたるだらだらしたシリーズになってしまいました。当初３回位で終わろうと思っていたのですが、大変申し訳なく。
本当はいくつか縛りをかけてスレッドにしようと考えていたのですが、一つもうまくいきませんでした。
当初あった縛りは
１ネット上で検索できる情報で構築
２先行論文とか難しいものは読んでも使わない
３誰でも分かるレベルのグラフ以外使用しない(高度なグラフは使わない)
４法定伝染病から軸をずらさない
だったのですが、もう最初からだめでしたね。やはり総督府全体を考えようとするとネット上の情報だけでは全く歯が立たず、結局国会図書館にたよることになってしまいました。できるだけ平易な物を目指しましたがどうやってもわかりやすくなりませんでした。
でも今調べていることも含め非常に勉強になりました。ＨＴＭＬに手を出し、Ｇｉｆの制作まで手をつけようとは当初思いもしませんでしたが。
さて、最後なので総合的な結論。
朝鮮半島における法定伝染病それぞれの、その年の人口に対する発生率(‰)
同上 死亡率(‰)
結論
法定伝染病に対する小結論
１ 天然痘・コレラについては周期的な流行傾向が見られ、特に1919-24にかけての天然痘、1919-20にかけてのコレラの流行は1918-19のスペイン風邪のパンデミックに重なっている。特にコレラは交通機関が発達し従来より急速に伝染病被害が拡大する傾向を示し、朝鮮半島もその点において近代化が進んでいたことを表す事実としてみてよい。
２ 天然痘は李氏朝鮮時代に種痘法（人痘法）が入っており、その時期は日本での導入時期とあまり差がない。導入時の医療の発達段階、その後の為政者や医者の対応、西洋への開国開港以降の動向など、諸般の事情により1870年代には圧倒的な差が生じており、朝鮮は種痘法を日本から学び導入することとなる。しかし導入者池の努力も空しく、その成果は極めて限定的なものであり、総督府統治直後天然痘はかなりの死者を出している。これが減少していくのは数年後であり、強制的ではあるが種痘を展開することにより患者、死者は激減する。その後の周期的患者発生は外部からの限定的侵入であり、半島全体の業病としての天然痘は撲滅に成功したと見てよい。ただし、昭和期になっても朝鮮人には大きな被害が出る年があり、種痘をきちんと受けていない集団がいたことが指摘できる。
なお、種痘に関しては朝鮮族の慣習（儒教的風習）にいち早く対応し、女性種痘技術者を養成していたことは総督府の施政の中でも注目すべき事項である。
３ コレラは純祖21(1821)・哲宗13(1862)・李太王16(M12：1879)と、李氏朝鮮末期に何回か大きな流行を繰り返していたことははっきりしている。特に1821には10万余の死者、1879には釜山で日本人の手を借りて対策をしているのにも拘わらず中央ではおまじないをするという李朝末期のお寒い状況が指摘できる。総督府時代は1919-20に爆発的な流行を起こす。これは極めて衝撃的なものであり、２年にわたりコレラ防疫志が上梓されるほどであった。しかしながら、この経験から徹底的な検疫体制や不必要な伝染拡大の阻止・朝鮮半島特有の問題などのハウツーが蓄積されたと考えられる。結果、これ以降ほぼ防疫に成功している。
４ 腸チフス・パラチフス・発疹チフス・赤痢は、撲滅するどころかむしろ対人口比で見ても患者は増加傾向を示す。対して死者は患者増加に比べかなり平坦であり、治療効果がしっかり出ていると考えてよい。これは衛生思想の向上（患者数全体の減少）ではなく、あくまで施療（無料診療）や強制的な治療（報告義務のある伝染病のため）によるものと考えられる。
５ 腸チフス(とパラチフス)は流行年と非流行年を交互に繰り返しながら一貫して患者増加傾向を示した。特に大正時代(1912-1926)の増加は著しい。この傾向は朝鮮半島に特異なものでなく、内地・台湾でも同様であり、人口の増加に衛生施設(特に水道と考えられる)が対応し切れていなかったことを示している。
６ 発疹チフスは朝鮮半島では1920年代まで報告がほとんど無い。これは当時の医療が内地も含め未発達でありチフスを同じ病気と見る傾向があり腸チフスと診断されていた可能性と、風習(煮沸洗濯・布団の不使用)による可能性の二つが考えられる。特に昭和期になると発疹チフスは増加傾向を見せるが、これは貧民層にも寝具や綿入冬服が普及していったため起きたのではないかと考えられる。
７ 赤痢は内地・台湾・半島では全く異なる傾向を示した。内地・半島では1919-20では発生が少なくなっていたが、理由は不明である。昭和にはいるとこの両地域は発生率そのものが増加する傾向を示すが、内地が高止まりしたままなのに対し、半島では戦時中に減少する、と言う不思議な傾向を示した。外地(半島・台湾)の内地人(日本人)は、現地人の発生率と似たような傾向を示しながらも漸次減少傾向を示した。
総督府の動向の小結論
Ａ 総督府は当初、警察医による診療・防疫活動を主軸に、外部からの伝染病流入に対しては憲兵・軍まで総動員しつつ、衛生環境の向上に当たっていた。また、医師不足を補うために1914に従来の漢方医を医生として認め限定的な医療に参加させている。また1913以降終戦まで巡回治療を行い無医村などでの治療に当たっていた。特に1919まではこの体制で巡回治療も800-2500回とかなり精力的にこなしている。
Ｂ しかし1920に大きな体制見直しが行われ、病院数は1919の395から139まで削減、巡回治療も837から265回まで減らしている。巡回治療そのものは1918から減少傾向にあり、最も少ない年(1937)では22回にまで減少する（ただし1923に1200回巡回しており必要に応じ増減させていたようである)。医生については自然減に任せていたようで急激な減少は起きていない。
これに対し西洋医は1920以降も急激に増加することはなかった。1919に1038人であった医師数は、1940でやっと3187人であり、人口1万に対し1.34。極めて危機的数であった。
Ｃ この問題について反日的論文では内地に比べ極めて貧弱である、台湾に比較しても朝鮮人軽視であると必ず書かれるが、内実は
1) 1920の病院削減は法規に則り明確に病院を定義した結果と考えられる
2) 巡回治療についてはコレラ大流行以降いったん施療者が減少するが一回当たりの診療者数はあまり減少せず、むしろ昭和になると以前より多い人数を診療している
3) 1925(T15)では８道のうち黄海・平安・咸鏡・江原では既に朝鮮人医師が全体の半数を超え、1940(S15)では慶尚南道を除く全ての地域で朝鮮人医師が多数を占めており、半島の医療を朝鮮人に任せようとしていたことが分かる。人材育成が追いついていなかっただけだと考えられる。
と、実はできる限り半島のことは朝鮮人にやらせていくという姿勢が総督府にあったためこの様な傾向が数字に表れたと考えられる。人材育成のミスについてはここでは議論しない。
Ｄ 総督府にとって1918-20にかけての伝染病蔓延は衛生行政を大きく変えたかと言う点については、疑問はあるが影響がなかったとは考えにくいと指摘したい。特にコレラ防疫志での検疫や患者の追跡などを見ると、この頃になっても朝鮮人の衛生概念は未発達であり、なおかつ官警の指導に従わない傾向が認められる。特に伝染病を「病魔」として考え、禁止されているにも関わらず不必要に移動を行う、儒教思想に縛られ遺体処理の原則を守らないなど、総督府の苦悩は計り知れないものだったと思われる。
Ｅ 社会的な問題、という切り口ではちょうどこの直前3.1運動が起きており、コレラ流行(8月)開始時には一応の決着がついているものの、防疫体制にはかなりの強権が必要だったのではないかと思われる。本件については、当時の政治状況や社会情勢について詳しく検討していないので、あくまで想像の範囲をでないが。
Ｆ 屎尿処理・汚物処理については京城を皮切りに内地と同様の組織(衛生会・衛生組合)で対応し、順次府庁などへ移行している。水道に関しては当初米人なども敷設を行っているが、総督府はそれらを全て購入している。ただ、これらの業務に追いつかない勢いで都市への人口集中・人口増加が起きていたと考えられる。
Ｇ 衛生思想という点については1918以降の伝染病大流行以前から啓蒙活動が行われていたと考えられるが、この時期を境に啓蒙活動に注力がなされたと思われる。それでも1940(S15)になっても採血(注射器)に対する単純な恐怖が残っているなど、効果についてはやや疑問が残る。それでもこの頃になると農村部でも家の隅に区画された便所を設けるようになり、共同井戸の管理体制も向上しているようである。
衛生と人口に関する結論
α 衛生管理の効果は1913までははっきりと見て取れない。これは伝染病に限らず、人口の変化からも指摘できる。
β 季節的死亡カレンダーや乳幼児の死亡率変化から想像されることは
1) 李氏朝鮮時代は終末期まで日本の中世に近い状態であったこと
2) 大正時代に急激に近代的死亡傾向に変化
3) 昭和には内地を追い越す近代化を遂げたと見ていいかもしれない
これがなぜ起きたかについては議論のあるところだが、総督府の衛生管理の影響は大きかったと思われる。
γ 人口動態については1915くらいまでは届出が徹底していなかった節が見られ、昭和に入っても(1930)人口調査によってやっと出生登録されるという部分があり、基礎情報であるにも関わらずその資料的価値には問題が存在していた。また、総督府統計年鑑の数字一つ一つについても縦横の数字がおかしい、年度が異なると数字が違うなど、数値そのものの信頼性に問題が存在していた。
δ 国民健康保険や保健所といったものは見つけられなかった。少なくとも医療保険については工場・船舶などにはあったと考えられ、保健所も都市部にはあったかもしれない。
総合的な結論
総督府の衛生行政は日鮮の差別はなかった。むしろ根強く残っていた儒教的習慣や積極的な生活状態の改善の否定など、朝鮮半島に根ざす問題が医療格差の障壁になっていたと考える。
医師不足については総督府側のミス(医師養成機関の増強を怠っていたと思われること)もあるが、朝鮮のことは朝鮮人に任せよう、という考えがあったのではないかと思われる。
診療についての格差(朝鮮在住内地人と朝鮮人との医者にかかる割合の差)は経済的問題と、やはり慣習の差と考える。
少なくとも天然痘とコレラについて撲滅にほぼ成功した。またペストについては内地と同じく流入阻止に成功している。これは総督府が強制的に種痘を推し進めたこと、検疫体制を強化していったことによる。もちろん内地や台湾でも同様の政策がとられていたが、この強制性を帝国の圧政と見ることは曲解である。
外来性の高い伝染病に対してチフスや赤痢といった常在的な伝染病はむしろ増加していった。これは総督府の人口政策に対し、衛生業務が追いついていなかったこと、予想以上に都市部への人口流入が激しかったことなどが原因と考える。また法定伝染病ではないがマラリアの減少など、総督府のあげた成果は少なくない。
残った疑問
１分からなかった言葉
「うしのみずたき」
２戦後の衛生
ＧＨＱは総督府の施政を受けより強権を持った衛生管理を行ったものと思われるが、朝鮮戦争で半島南部のインフラはかなり破壊されたと考えられ、同時に衛生思想もかなり低下してしまったのではないかと推測している。その結果、現代の韓国における衛生思想と日本における衛生思想の差ができあがったのではないだろうか。ただし、現代台湾も衛生思想については部分的にせよ後退していると感じる面があり、戦前の衛生思想そのものが現地人はどちらも未発達のまま終戦を迎えた可能性も否めない。ここは今後の課題である。ＧＨＱの施政と、その後の大韓民国の施政をつなげていくと、おそらく現代韓国の衛生思想の貧弱さの理由が浮かんでくると思う。
以上。