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IBMも鼎泰豊も中国から撤退…海外資本の大脱走が再燃
 
IBMも鼎泰豊も中国から撤退…海外資本の大脱走が再燃
IBMも鼎泰豊も中国から撤退…海外資本の大脱走が再燃

 米テクノロジー企業大手IBMが8月下旬、中国国内の研究開発から撤退すると発表しました。北京、上海、大連にある研究施設を閉鎖し、約1600人の中国人職員を整理することを決めたのです。



【写真】 鼎泰豊の華北地区の店舗に掲げられた営業終了の告知

 偶然にも同日、台湾系の有名点心レストランチェーン「鼎泰豊」が華北地域の14店舗を10月末で閉店すると発表しました。中国人にとって話題になったのは、IBMよりむしろ鼎泰豊撤退のニュースでした。ソーシャルメディアの微博(ウェイボー、中国版X)に関連ニュースやコメントの書き込みが殺到しました。

 IBMと鼎泰豊は中国進出からそれぞれ40年、20年に達する海外企業です。こうした企業が苦労して積み上げた基盤を捨てて撤収を決めたのは、中国経済の将来は暗いとみているからでしょう。

 外国企業による中国撤退のニュースは今に始まったことではありませんが、最近になって加速している感があります。昨年下半期にも米調査会社ギャラップ、世界的な資産運用会社のバンガードグループ、日本の三菱自動車などが撤退を発表しました。

■消費低迷で営業許可の更新見送り

 IBMはこれまで中国企業や政府機関などを対象にサーバー用コンピューターの販売、メンテナンス、コンサルティングなどを行ってきましたが、昨年の中国での売上高が前年に比べ19.6%も減ったということです。そこに米中の技術競争、地政学的対立、中国国内の自国製品消費運動などが複合的に作用したと分析されています。

 鼎泰豊は2001年に上海に進出して以来、中国全土に31店舗を展開しています。そのうち北京をはじめとする華北地域の14店舗を閉鎖することにしました。国貿、西単、王府井など北京都心の主要店舗が全て含まれています。

 華北地域を担当する鼎泰豊の現地法人、北京恒泰豊餐飲は2004年に設立されました。営業許可期間20年が今年で満了となるため、更新しないことに決めたそうです。

 鼎泰豊は店舗撤収理由について、「営業許可更新を巡り理事会内部で意見の一致を見ることができなかった」とだけ説明しました。業界では2022年末のコロナ規制解除以降も中国の消費が低迷して損失が増大し、最終的に撤収を決めたとみています。上海、広州などにある残る17店舗は存続します。

■証券市場からも120億ドル離脱

 外国企業の中国撤退は統計にも表れています。中国国家外国為替管理局によると、今年第2四半期の中国の海外直接投資(FDI)動向を示す対内直接投資はマイナス148億ドルを記録しました。昨年第3四半期(マイナス121億ドル)以来3四半期ぶりの記録更新となりました。純流出とは中国への投資よりも中国から引き揚げられた資金が多いことを示しています。


昨年第3四半期にマイナス121億ドルを記録したのは、中国政府には大きなショックでした。1998年にFDIの統計を取り始めて以来、四半期ベースでFDIがマイナスとなったのは初めてでした。今回は2回目ですが、純流出の規模が昨年第3四半期を上回りました。中国のFDIはゼロコロナ政策で上海が封鎖される直前の2022年第1四半期に1072億ドルのプラスを記録した後、減少傾向が続いています。

 状況は証券市場も似ています。英フィナンシャルタイムズによりますと、今年6月初め以降、中国証券市場から120億ドル以上の外国資金が引き潮のように流出したということです。昨年第3四半期の3カ月間に109億ドルが離脱したのに続き、再び大脱走が始まったのです。資金流出が続くと、中国の証券取引所は8月18日から本土外資金の動向に関する毎日の統計発表を中断しました。

■中国経済悲観論が主因

 昨年下半期の外資撤退は、昨年7月1日に施行された反スパイ法の影響が大きかったと言えます。中国当局が米系コンサルティング会社を家宅捜索し、役員に出国禁止措置を取るなど、厳しい圧力を加えると、外国企業は次々と中国からの撤退を選びました。

 これに対し、今年は中国経済の将来に対する悲観論が主因として作用しました。中国の第2四半期の成長率は4.7%で、市場予想(5.1%)をはるかに下回り、6月の消費の伸びは2.0%にとどまりました。中国経済が不動産バブルの崩壊に足を引っ張られ、低迷の沼からなかなか抜け出せずにいる状況です。

 外国資本の撤退は、中国経済にとって大きな打撃です。今回の撤退でIBMは1600人、ディンタイフォンは800人余りの職員を整理解雇するそうです。ここ数年間続いた外国企業の撤退で北京、上海などでは高収入の雇用が続々となくなっています。

■鄧小平を大々的に強調する理由

 焦った李強首相は8月中旬に製造業規制緩和、さまざまな投資制限の撤廃など外資誘致策を打ち出しました。しかし、一連の措置が外資離脱の流れを逆転させると考える人は多くありません。

 中国政府が8月22日に鄧小平生誕120周年を大々的に盛り上げたのも、そうした雰囲気と無関係ではありません。2年前に鄧小平南巡講話30周年が静かに過ぎ去ったのとは対照的です。習近平主席が鄧小平の改革開放路線を忠実に継承するというメッセージを国内外に発したと言えます。

 習主席は2012年に党総書記に選出された直後にも、真っ先に深圳を訪ね、鄧小平の銅像に献花し、改革派とされる胡耀邦元総書記の息子、胡徳平氏に会いました。しかし、その後は共同富裕のスローガンを掲げ、鄧小平とは正反対の道を歩みました。右にウィンカーを出して左折したようなものです。今回はそんなトリックはうまく通用しないようです。

 


IBMも中国から撤退、海外資本の大脱走シーズン2

IBMも鼎泰豊も中国から撤退…海外資本の大脱走が再燃
 
IBMも鼎泰豊も中国から撤退…海外資本の大脱走が再燃
IBMも鼎泰豊も中国から撤退…海外資本の大脱走が再燃

 米テクノロジー企業大手IBMが8月下旬、中国国内の研究開発から撤退すると発表しました。北京、上海、大連にある研究施設を閉鎖し、約1600人の中国人職員を整理することを決めたのです。



【写真】 鼎泰豊の華北地区の店舗に掲げられた営業終了の告知

 偶然にも同日、台湾系の有名点心レストランチェーン「鼎泰豊」が華北地域の14店舗を10月末で閉店すると発表しました。中国人にとって話題になったのは、IBMよりむしろ鼎泰豊撤退のニュースでした。ソーシャルメディアの微博(ウェイボー、中国版X)に関連ニュースやコメントの書き込みが殺到しました。

 IBMと鼎泰豊は中国進出からそれぞれ40年、20年に達する海外企業です。こうした企業が苦労して積み上げた基盤を捨てて撤収を決めたのは、中国経済の将来は暗いとみているからでしょう。

 外国企業による中国撤退のニュースは今に始まったことではありませんが、最近になって加速している感があります。昨年下半期にも米調査会社ギャラップ、世界的な資産運用会社のバンガードグループ、日本の三菱自動車などが撤退を発表しました。

■消費低迷で営業許可の更新見送り

 IBMはこれまで中国企業や政府機関などを対象にサーバー用コンピューターの販売、メンテナンス、コンサルティングなどを行ってきましたが、昨年の中国での売上高が前年に比べ19.6%も減ったということです。そこに米中の技術競争、地政学的対立、中国国内の自国製品消費運動などが複合的に作用したと分析されています。

 鼎泰豊は2001年に上海に進出して以来、中国全土に31店舗を展開しています。そのうち北京をはじめとする華北地域の14店舗を閉鎖することにしました。国貿、西単、王府井など北京都心の主要店舗が全て含まれています。

 華北地域を担当する鼎泰豊の現地法人、北京恒泰豊餐飲は2004年に設立されました。営業許可期間20年が今年で満了となるため、更新しないことに決めたそうです。

 鼎泰豊は店舗撤収理由について、「営業許可更新を巡り理事会内部で意見の一致を見ることができなかった」とだけ説明しました。業界では2022年末のコロナ規制解除以降も中国の消費が低迷して損失が増大し、最終的に撤収を決めたとみています。上海、広州などにある残る17店舗は存続します。

■証券市場からも120億ドル離脱

 外国企業の中国撤退は統計にも表れています。中国国家外国為替管理局によると、今年第2四半期の中国の海外直接投資(FDI)動向を示す対内直接投資はマイナス148億ドルを記録しました。昨年第3四半期(マイナス121億ドル)以来3四半期ぶりの記録更新となりました。純流出とは中国への投資よりも中国から引き揚げられた資金が多いことを示しています。


昨年第3四半期にマイナス121億ドルを記録したのは、中国政府には大きなショックでした。1998年にFDIの統計を取り始めて以来、四半期ベースでFDIがマイナスとなったのは初めてでした。今回は2回目ですが、純流出の規模が昨年第3四半期を上回りました。中国のFDIはゼロコロナ政策で上海が封鎖される直前の2022年第1四半期に1072億ドルのプラスを記録した後、減少傾向が続いています。

 状況は証券市場も似ています。英フィナンシャルタイムズによりますと、今年6月初め以降、中国証券市場から120億ドル以上の外国資金が引き潮のように流出したということです。昨年第3四半期の3カ月間に109億ドルが離脱したのに続き、再び大脱走が始まったのです。資金流出が続くと、中国の証券取引所は8月18日から本土外資金の動向に関する毎日の統計発表を中断しました。

■中国経済悲観論が主因

 昨年下半期の外資撤退は、昨年7月1日に施行された反スパイ法の影響が大きかったと言えます。中国当局が米系コンサルティング会社を家宅捜索し、役員に出国禁止措置を取るなど、厳しい圧力を加えると、外国企業は次々と中国からの撤退を選びました。

 これに対し、今年は中国経済の将来に対する悲観論が主因として作用しました。中国の第2四半期の成長率は4.7%で、市場予想(5.1%)をはるかに下回り、6月の消費の伸びは2.0%にとどまりました。中国経済が不動産バブルの崩壊に足を引っ張られ、低迷の沼からなかなか抜け出せずにいる状況です。

 外国資本の撤退は、中国経済にとって大きな打撃です。今回の撤退でIBMは1600人、ディンタイフォンは800人余りの職員を整理解雇するそうです。ここ数年間続いた外国企業の撤退で北京、上海などでは高収入の雇用が続々となくなっています。

■鄧小平を大々的に強調する理由

 焦った李強首相は8月中旬に製造業規制緩和、さまざまな投資制限の撤廃など外資誘致策を打ち出しました。しかし、一連の措置が外資離脱の流れを逆転させると考える人は多くありません。

 中国政府が8月22日に鄧小平生誕120周年を大々的に盛り上げたのも、そうした雰囲気と無関係ではありません。2年前に鄧小平南巡講話30周年が静かに過ぎ去ったのとは対照的です。習近平主席が鄧小平の改革開放路線を忠実に継承するというメッセージを国内外に発したと言えます。

 習主席は2012年に党総書記に選出された直後にも、真っ先に深圳を訪ね、鄧小平の銅像に献花し、改革派とされる胡耀邦元総書記の息子、胡徳平氏に会いました。しかし、その後は共同富裕のスローガンを掲げ、鄧小平とは正反対の道を歩みました。右にウィンカーを出して左折したようなものです。今回はそんなトリックはうまく通用しないようです。



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