ウクライナ軍、クルスク州で戦車7両を鹵獲し歩兵車両10両奪われる 混乱の3週間で
ロシア陸軍のT-80戦車。2022年9月、モスクワ州クビンカ(Ja Het / Shutterstock.com)
ウクライナによるロシア西部クルスク州への奇襲侵攻から4週間近く経過し、ウクライナ軍の進撃は減速してきている。ウクライナ側の大隊が補給線の限界に達し、壕に入る一方、ロシア側は増援部隊がさらに到着している。こうしたなかで、クルスク州の前線は塹壕戦の様相を強めている。
クルスク州内の接触線は今後数週間で、ウクライナ国内のほとんどの最前線と似たような状況になってくる可能性が高い。つまり、堅固な陣地が構築され、膠着し、双方とも陣地を出て行う攻撃は非常に危険なものになる。
周知のとおり、ウクライナ東部ドネツク州のポクロウシク正面は、膠着した前線の例外だ。この正面では、ウクライナ軍の防御部隊の統率が乱れるなかでロシア軍が引き続き前進している。ロシア側の前進ペースがあまりに速いため、ウクライナや支援国の政府で懸念が広がり、責任を問う声も出ている。
つい2週間ほど前まで、クルスク州の戦線は流動的だった。当時の混沌とした状況を反映しているのが、双方で鹵獲された装備のリストだ。ウクライナ軍部隊がクルスク州に電撃的に侵入し、不意を突かれたロシア側が可能な時と場所で反撃するなか、双方とも装甲車両などの遺棄が相次ぎ、一部は敵側に鹵獲された。
オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」が確認したところでは、ウクライナ軍はクルスクに侵攻した8月6日から27日までに、ロシア側の車両11両と榴弾砲1門、ドローン(無人機)1機を鹵獲した。一方、ロシア側はこの間にウクライナ軍の車両10両を鹵獲した。
これらの数字は鹵獲数の急増を意味する。7月の同じ3週間では、ウクライナ側によるロシア軍装備の鹵獲数は1000kmにおよぶ前線全体でわずか8、ロシア側によるウクライナ軍装備の鹵獲数は10だった。
双方が遺棄した装備の種類が状況を物語っている。迅速に行動しようとしたウクライナ側の歩兵大隊は、通常と違ってドローンや大砲の支援を受けずに、装甲車両でロシア側の防御線の奥深くまで入り込んだ。
鹵獲された車両からうかがえるウクライナ軍の作戦行動
こうした事情から、ロシア側が鹵獲したウクライナ軍の車両はすべて歩兵戦闘車か装甲兵員輸送車、強襲用の装甲トラックとなっている。内訳はBMP歩兵戦闘車2両、BTR-4装甲兵員輸送車2両、ストライカー装輪装甲車2両、トラック4両だ。ウクライナ側が鹵獲した車両はより重量級の組み合わせで、T-72戦車、T-80戦車、T-90戦車計7両と輸送用の非装甲トラック4両となっている。
ウクライナ軍の侵攻部隊の主力を担っている8個かそこらのウクライナ軍旅団のうち、第82独立空中強襲旅団と第92独立空中強襲旅団が最も多く車両を失っているようだ。これらの旅団が戦場で精力的に動き回っているのを考えれば当然だろう。
ロシア側では第4戦車師団が最も多く車両を奪われたとみられる。うち3両のT-80は、いずれウクライナ軍で再就役することになるのがほぼ確実だ。
クルスク州の戦線が安定化してくるにつれて、当然のことながら鹵獲数も減ってきている。ウクライナ側は侵攻後の2週間かそこらでクルスク州の1100平方km近くを一気に制圧したが、先週1週間に制圧したのは100平方kmほどにとどまっている。
ウクライナがクルスク侵攻で何を達成しようとしているのかはいまだによくわからない。ウクライナが引き続き防御よりも攻撃を優先するなか、クルスク州で得ているものがポクロウシク方面で失いつつあるものと引き合うのかも、依然としてはっきりしない。
クルスク侵攻の戦略的な意味が判然としない一方で、物的損害の面では五分五分なのは確かだ。鹵獲数がほぼ同じなほか、重装備の損失数も8月27日時点でウクライナ側が87、ロシア側が59とそこまで大きな偏りは生じていない。
ウクライナ軍、クルスク州で戦車7両を鹵獲し歩兵車両10両奪われる 混乱の3週間で
ロシア陸軍のT-80戦車。2022年9月、モスクワ州クビンカ(Ja Het / Shutterstock.com)
ウクライナによるロシア西部クルスク州への奇襲侵攻から4週間近く経過し、ウクライナ軍の進撃は減速してきている。ウクライナ側の大隊が補給線の限界に達し、壕に入る一方、ロシア側は増援部隊がさらに到着している。こうしたなかで、クルスク州の前線は塹壕戦の様相を強めている。
クルスク州内の接触線は今後数週間で、ウクライナ国内のほとんどの最前線と似たような状況になってくる可能性が高い。つまり、堅固な陣地が構築され、膠着し、双方とも陣地を出て行う攻撃は非常に危険なものになる。
周知のとおり、ウクライナ東部ドネツク州のポクロウシク正面は、膠着した前線の例外だ。この正面では、ウクライナ軍の防御部隊の統率が乱れるなかでロシア軍が引き続き前進している。ロシア側の前進ペースがあまりに速いため、ウクライナや支援国の政府で懸念が広がり、責任を問う声も出ている。
つい2週間ほど前まで、クルスク州の戦線は流動的だった。当時の混沌とした状況を反映しているのが、双方で鹵獲された装備のリストだ。ウクライナ軍部隊がクルスク州に電撃的に侵入し、不意を突かれたロシア側が可能な時と場所で反撃するなか、双方とも装甲車両などの遺棄が相次ぎ、一部は敵側に鹵獲された。
オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」が確認したところでは、ウクライナ軍はクルスクに侵攻した8月6日から27日までに、ロシア側の車両11両と榴弾砲1門、ドローン(無人機)1機を鹵獲した。一方、ロシア側はこの間にウクライナ軍の車両10両を鹵獲した。
これらの数字は鹵獲数の急増を意味する。7月の同じ3週間では、ウクライナ側によるロシア軍装備の鹵獲数は1000kmにおよぶ前線全体でわずか8、ロシア側によるウクライナ軍装備の鹵獲数は10だった。
双方が遺棄した装備の種類が状況を物語っている。迅速に行動しようとしたウクライナ側の歩兵大隊は、通常と違ってドローンや大砲の支援を受けずに、装甲車両でロシア側の防御線の奥深くまで入り込んだ。
鹵獲された車両からうかがえるウクライナ軍の作戦行動
こうした事情から、ロシア側が鹵獲したウクライナ軍の車両はすべて歩兵戦闘車か装甲兵員輸送車、強襲用の装甲トラックとなっている。内訳はBMP歩兵戦闘車2両、BTR-4装甲兵員輸送車2両、ストライカー装輪装甲車2両、トラック4両だ。ウクライナ側が鹵獲した車両はより重量級の組み合わせで、T-72戦車、T-80戦車、T-90戦車計7両と輸送用の非装甲トラック4両となっている。
ウクライナ軍の侵攻部隊の主力を担っている8個かそこらのウクライナ軍旅団のうち、第82独立空中強襲旅団と第92独立空中強襲旅団が最も多く車両を失っているようだ。これらの旅団が戦場で精力的に動き回っているのを考えれば当然だろう。
ロシア側では第4戦車師団が最も多く車両を奪われたとみられる。うち3両のT-80は、いずれウクライナ軍で再就役することになるのがほぼ確実だ。
クルスク州の戦線が安定化してくるにつれて、当然のことながら鹵獲数も減ってきている。ウクライナ側は侵攻後の2週間かそこらでクルスク州の1100平方km近くを一気に制圧したが、先週1週間に制圧したのは100平方kmほどにとどまっている。
ウクライナがクルスク侵攻で何を達成しようとしているのかはいまだによくわからない。ウクライナが引き続き防御よりも攻撃を優先するなか、クルスク州で得ているものがポクロウシク方面で失いつつあるものと引き合うのかも、依然としてはっきりしない。
クルスク侵攻の戦略的な意味が判然としない一方で、物的損害の面では五分五分なのは確かだ。鹵獲数がほぼ同じなほか、重装備の損失数も8月27日時点でウクライナ側が87、ロシア側が59とそこまで大きな偏りは生じていない。