「建材一体型太陽電池（BIPV）を普及させ、都市部のビルの窓を『発電所』に変える。2026年には製品を市場投入したい」。YKK AP（東京・千代田）と関電工の業務提携に関する24年5月24日の発表会で、YKK APの魚津彰社長は力強く語った。

　両社は太陽光発電機能を備えた“次世代建材”の開発で、タッグを組んだ。YKK APが製品の開発と販売、関電工が施工技術や電設部材を含めたシステム開発を担当する。両社で製品のメンテナンス性やリサイクル性に関する検討も進める。関電工の仲摩俊男社長は、「BIPVの強みを発揮する方法を提案していく」と意気込む。太陽電池モジュールの調達は特定企業に頼らず、メーカー各社と連携する方針だ。

　開発する建材のターゲットは、ビルの内窓と外壁だ。新築ビルにも既存ビルにも取り付けられる「内窓タイプ」と、カーテンウオールを採用した新築ビル向けの「スパンドレル内蔵タイプ」の2種類を開発する。

　内窓タイプは採光や眺望などを確保する観点から、透過率60％を目指して開発を進める。軽くて折り曲げやすい特長を持つペロブスカイト型太陽電池を活用する方針だ。

　スパンドレル内蔵タイプは上下の開口部の間に取り付ける。開口部ではないので、透過性よりも発電効率を重視する。ペロブスカイト型と既存のシリコン型を重ね合わせたタンデム型太陽電池の利用などを検討していく。

　両社は24年内にも、ペロブスカイト型太陽電池などを用いた実証実験を始める。YKK APの中谷卓也新規事業開拓部長は、「内窓タイプは、製品の外側に通常のガラス窓を設置することになる。発電効率が落ちる中で、いかに発電量を確保できるかがテーマになる」と説明する。

　開発コストや販売目標は未定。YKK APの魚津社長は、「実験結果を踏まえて具体的な数字をまとめ、改めて公表する」とした。

　YKK APと関電工以外にも、BIPVの開発・販売に取り組む企業はある。その1つが大成建設とカネカだ。19年にシリコン型太陽電池を採用したガラス一体型太陽光発電システム「T-Green Multi Solar（ティー・グリーン・マルチ・ソーラー）」を開発し、オフィスビルや教育施設などで実績を積んできた。22年10月にはマンションのバルコニー用の製品も開発している。