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中央日報日本語版2023.01.17 11:05

大韓民国の国家安全保障を脅かすのは核・ミサイルなど北朝鮮の戦略武器だけではない。昨年12月26日にソウル上空を飛行した北朝鮮の無人機は目に見える非対称軍事脅威だ。目に見えにくく、国家安全保障を徐々に蚕食する勢力もある。国内人、外国人を問わず活動するスパイだ。

隠密な諜報活動は進化している。「霧雨に服が濡れるのも分からない」ということわざのように、最近のスパイは密かに弱点をつく。2021年6月に韓国で翻訳出版された豪チャールズスタート大のクライブ・ハミルトン教授の著書『中国の目に見えぬ侵略(Silent Invasion)』というタイトルが端的に表現している。

◆尹政権に入って浮き彫りになるスパイ事件

存在を捕らえにくいほどスパイの「矛」は鋭利になったが、これを防御する「盾」は鈍くて穴が多い。文在寅(ムン・ジェイン)前政権が書き込み捜査を政治的に利用しながらサイバー安全保障はほとんど犯罪視され、スパイを捕まえる国家情報院の対共捜査は事実上中断した。過去5年間のスパイ捜査は「忠北(チュンブク)同志会事件」がほとんど唯一だ。

昨年5月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に入り、国家情報院のスパイ捜査がまた部分的に再開され、あちこちで暗躍したスパイの尾が次々と表れている。済州ハンギル会、昌原民衆自主統一前衛、全州全北民衆行動などが言及され、民主党出身無所属の尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員の補佐官までが登場した。公安当局によると、この人たちはほとんどが「政権の捏造」と反論したり、黙秘権を行使中という。

北朝鮮の南派スパイや自然発生的な従北主体思想派の諜報だけが問題ではない。最近は外国人スパイの「目に見えぬ侵略」と「影響力工作」が国家安全保障と国益を脅かすという懸念が強い。例えばスペインに本部を置いた非営利人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」の昨年12月の暴露内容が衝撃的だ。同団体は「中国が『海外110服務中心』という名の秘密警察署を韓国・日本など少なくとも53カ国に102カ所以上を運営している」と主張した。ソウル蚕室(チャムシル)の中華料理店「東方明珠」などに対し、公安当局がウィーン条約と実定法違反について調べている。

韓国が世界10位圏の経済大国に成長し、サムスン電子に代表される情報通信技術(ICT)強国になったことで、産業スパイも増えている。アイドルグループBTS(防弾少年団)とドラマ『イカゲーム』など韓流ブームで韓国が魅力国家として注目されると、各国の在韓大使館にも韓国勤務を希望する人が増えている。これは同時に韓国を狙うグローバルスパイをソウルに呼び込む要因になっている。

スパイは韓国の先端技術と各種情報を狙うだけでなく、韓国の世論を自国の利益を最大化する方向に導き、さらには歪曲しようという動機と意図を持つ。では、標的になった韓国の国益を守るための手段、すなわち盾はどれほど丈夫なのだろうか。残念ながら韓国の国益を守るための防諜対策は十分でなく、死角地帯が非常に多い。

◆時代に追いつけない「刑法98条」

最も大きな問題は、1953年の制定から70年間にわたり時代の変化を反映できていない「刑法98条」だ。98条第1項は「敵国のために間諜行為をしたり敵国の間諜をほう助した者は死刑、無期または7年以上の懲役に処する」と規定している。北朝鮮のような明示的な「敵国」に制限するため、中国はもちろんで米国・日本など外国または外国団体のための間諜行為を処罰するのが難しい。実際、2015年に中国に機密を流出した海軍に間諜罪を適用できなかった。

半面、権威主義国家の中国は反間諜法に「外国機構・組織」を明示し、ロシアの刑法も「外国と外国団体およびその団体の代表者」と規定している。自由民主主義国家の米国は連邦法に「敵国」でなく「外国政府や外国の敵」と、フランスの刑法は外国政府・団体・要員などと、ドイツ刑法は「他国」と、間諜罪の対象を明示している。

建国大のソク・ジェワン安保災難管理学科教授(国家情報フォーラム代表)は「中国はもちろん米国など友邦も韓国企業の半導体・人工知能(AI)・バッテリーなど先端技術を狙う」とし「こうした状況であるにもかかわらず防諜法制化水準が低く、まともに対応できていないのが実情」と指摘した。国家情報院で26年間活動したソク教授は「進歩政府が北を和解の対象と見なせば『敵国』ではないため、スパイが活動しても処罰を受けず、むしろスパイと協力した韓国人だけが処罰を受けるというあきれる状況が発生する」とし「敵国の範疇に入らない国や外国人・外国団体による間諜行為を処罰できるよう刑法上間諜罪構成要件を『敵国』でなく『外国』に早期に改めなければいけない」と強調した。

韓国人が国益に背く形で外国を助ける情報活動をしても現行法では処罰の根拠が十分でない点も問題だ。慶尚国立大のホン・ジョンヒョン法学科教授は「友好的な国でも韓国で自国に有利になるよう韓国の世論を歪曲したり、さらに選挙で有利な候補の当選のために世論を操作する『影響力工作』活動をしても、現行法では処罰の死角地帯が存在する」とし「米国・オーストラリア・シンガポールのように韓国も『外国代理人登録法』を制定する必要がある」と指摘した。


◆米国・豪州・英国などは積極的に対処

例えば米国の場合、1938年に英国が米国の参戦を誘導し、ドイツが米国の中立を誘導するために宣伝活動を展開すると、対応策として「外国代理人登録法」(FARA)を制定した。外国の政府・団体のために活動する代理人の事前申告と活動事項報告を義務づけた。この法は、連邦議会の議案通過や否決に影響を与えるため議員と接触する行為に関する「連邦ロビイスト規制法」(FRLA、1946年)より先に制定された。

オーストラリアは2018年にオーストラリアの内政に干渉すれば処罰が可能な「外国影響力透明化法」を、シンガポールは2021年に「外国介入防止法」を制定し、中国が海外に設置した孔子学院の運営指針まで定めた。「外国代理人登録法」を制定すれば、韓国に影響力を及ぼそうとする工作行為を事前にモニタリングでき、事後に摘発されれば処罰することができる。内政干渉を遮断し、国家の主権を守ることができる対策ということだ。

外国のスパイがスマートフォンを利用して隠密な情報活動をしながら機密資料を流出しても、現在は遮断する適当な方法がない。現行の通信秘密保護法によると、合法的な携帯電話盗聴が可能だが、電気通信事業者の携帯電話盗聴設備具備を義務化した法条項がなく実効性がない。米国は1994年に制定された通信情報把握支援法に基づき、政府または通信会社が盗聴設備費用を負担していて、英国・ドイツ・オーストラリアも似ている。韓国政府が参考にすべき点だ。

国際政治には永遠の敵も永遠の友邦もない。戦争状況でないとしても国益を蚕食する間諜犯罪は徹底的に防がなければならない。先端ICT時代に諜報活動は国内外、オン・オフラインを問わない。尹錫悦政権は専門家の意見を集めて国益を守る防諜対策を早期に準備する必要がある。

チャン・セジョン/論説委員

◆「国家情報院の対共捜査権廃止はスパイを捕まえないということ…見直し必要」

対共捜査は国家の存立や自由民主体制を扱う重大な事案だ。対共捜査権を組織利己主義と見なしてはいけない。ところが文在寅政権の2020年11月、民主党は巨大議席を武器に国家情報院法改正案を単独で強行処理し、2024年1月から国家情報院の対共捜査権を警察に移した。当時の朴智元(パク・ジウォン)国家情報院長の主導で進めた。

しかしそれに相応する警察の対共捜査力量強化措置はなかった。むしろ人員を減らし、活動費を削減した。非専門家らが指揮部を掌握し、専門家らは対共分野を離れた。警察に対共捜査を担当させたのは、文政権が対共捜査をできないようにするためという解釈が出てくるほどだった。

国民がよく知るように北朝鮮スパイ捜査は国家情報院が最も優れている。尹錫悦大統領は文政権の脱原発政策を「5年間のバカな行為」と言ったが、国家情報院の対共捜査権廃止こそが「国家安全保障の脱原発」のような重大失策だ。

国家安全保障関連業務は単一の機関が単独で遂行するよりも、独立した複数の機関が細かく重複して遂行するのがよい。反復・重複装置がなければエラーが発生する可能性が高い。その間、国家情報院・検察・警察が重複的にしてきた対共捜査を来年から警察が単独でする。

警察は2021年、忠北同志会事件の捜査を国家情報院と共にした。済州間諜団事件と尹美香議員の元補佐官間諜事件も国家情報院と共にしている。合同捜査といっても誰が主導して誰が従うのかは明らかだ。警察は来年から果たして単独で対共捜査をする自信があるのだろうか。国家情報院の対共捜査権廃止は見直す必要がある。

チャン・ソクグァン/元国家情報大学院教授



【コラム】「目に見えぬ侵略」諜報活動が活発…防ぐ「盾」は穴だらけ=韓国

中央日報日本語版2023.01.17 11:05

大韓民国の国家安全保障を脅かすのは核・ミサイルなど北朝鮮の戦略武器だけではない。昨年12月26日にソウル上空を飛行した北朝鮮の無人機は目に見える非対称軍事脅威だ。目に見えにくく、国家安全保障を徐々に蚕食する勢力もある。国内人、外国人を問わず活動するスパイだ。

隠密な諜報活動は進化している。「霧雨に服が濡れるのも分からない」ということわざのように、最近のスパイは密かに弱点をつく。2021年6月に韓国で翻訳出版された豪チャールズスタート大のクライブ・ハミルトン教授の著書『中国の目に見えぬ侵略(Silent Invasion)』というタイトルが端的に表現している。

◆尹政権に入って浮き彫りになるスパイ事件

存在を捕らえにくいほどスパイの「矛」は鋭利になったが、これを防御する「盾」は鈍くて穴が多い。文在寅(ムン・ジェイン)前政権が書き込み捜査を政治的に利用しながらサイバー安全保障はほとんど犯罪視され、スパイを捕まえる国家情報院の対共捜査は事実上中断した。過去5年間のスパイ捜査は「忠北(チュンブク)同志会事件」がほとんど唯一だ。

昨年5月に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に入り、国家情報院のスパイ捜査がまた部分的に再開され、あちこちで暗躍したスパイの尾が次々と表れている。済州ハンギル会、昌原民衆自主統一前衛、全州全北民衆行動などが言及され、民主党出身無所属の尹美香(ユン・ミヒャン)国会議員の補佐官までが登場した。公安当局によると、この人たちはほとんどが「政権の捏造」と反論したり、黙秘権を行使中という。

北朝鮮の南派スパイや自然発生的な従北主体思想派の諜報だけが問題ではない。最近は外国人スパイの「目に見えぬ侵略」と「影響力工作」が国家安全保障と国益を脅かすという懸念が強い。例えばスペインに本部を置いた非営利人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」の昨年12月の暴露内容が衝撃的だ。同団体は「中国が『海外110服務中心』という名の秘密警察署を韓国・日本など少なくとも53カ国に102カ所以上を運営している」と主張した。ソウル蚕室(チャムシル)の中華料理店「東方明珠」などに対し、公安当局がウィーン条約と実定法違反について調べている。

韓国が世界10位圏の経済大国に成長し、サムスン電子に代表される情報通信技術(ICT)強国になったことで、産業スパイも増えている。アイドルグループBTS(防弾少年団)とドラマ『イカゲーム』など韓流ブームで韓国が魅力国家として注目されると、各国の在韓大使館にも韓国勤務を希望する人が増えている。これは同時に韓国を狙うグローバルスパイをソウルに呼び込む要因になっている。

スパイは韓国の先端技術と各種情報を狙うだけでなく、韓国の世論を自国の利益を最大化する方向に導き、さらには歪曲しようという動機と意図を持つ。では、標的になった韓国の国益を守るための手段、すなわち盾はどれほど丈夫なのだろうか。残念ながら韓国の国益を守るための防諜対策は十分でなく、死角地帯が非常に多い。

◆時代に追いつけない「刑法98条」

最も大きな問題は、1953年の制定から70年間にわたり時代の変化を反映できていない「刑法98条」だ。98条第1項は「敵国のために間諜行為をしたり敵国の間諜をほう助した者は死刑、無期または7年以上の懲役に処する」と規定している。北朝鮮のような明示的な「敵国」に制限するため、中国はもちろんで米国・日本など外国または外国団体のための間諜行為を処罰するのが難しい。実際、2015年に中国に機密を流出した海軍に間諜罪を適用できなかった。

半面、権威主義国家の中国は反間諜法に「外国機構・組織」を明示し、ロシアの刑法も「外国と外国団体およびその団体の代表者」と規定している。自由民主主義国家の米国は連邦法に「敵国」でなく「外国政府や外国の敵」と、フランスの刑法は外国政府・団体・要員などと、ドイツ刑法は「他国」と、間諜罪の対象を明示している。

建国大のソク・ジェワン安保災難管理学科教授(国家情報フォーラム代表)は「中国はもちろん米国など友邦も韓国企業の半導体・人工知能(AI)・バッテリーなど先端技術を狙う」とし「こうした状況であるにもかかわらず防諜法制化水準が低く、まともに対応できていないのが実情」と指摘した。国家情報院で26年間活動したソク教授は「進歩政府が北を和解の対象と見なせば『敵国』ではないため、スパイが活動しても処罰を受けず、むしろスパイと協力した韓国人だけが処罰を受けるというあきれる状況が発生する」とし「敵国の範疇に入らない国や外国人・外国団体による間諜行為を処罰できるよう刑法上間諜罪構成要件を『敵国』でなく『外国』に早期に改めなければいけない」と強調した。

韓国人が国益に背く形で外国を助ける情報活動をしても現行法では処罰の根拠が十分でない点も問題だ。慶尚国立大のホン・ジョンヒョン法学科教授は「友好的な国でも韓国で自国に有利になるよう韓国の世論を歪曲したり、さらに選挙で有利な候補の当選のために世論を操作する『影響力工作』活動をしても、現行法では処罰の死角地帯が存在する」とし「米国・オーストラリア・シンガポールのように韓国も『外国代理人登録法』を制定する必要がある」と指摘した。


◆米国・豪州・英国などは積極的に対処

例えば米国の場合、1938年に英国が米国の参戦を誘導し、ドイツが米国の中立を誘導するために宣伝活動を展開すると、対応策として「外国代理人登録法」(FARA)を制定した。外国の政府・団体のために活動する代理人の事前申告と活動事項報告を義務づけた。この法は、連邦議会の議案通過や否決に影響を与えるため議員と接触する行為に関する「連邦ロビイスト規制法」(FRLA、1946年)より先に制定された。

オーストラリアは2018年にオーストラリアの内政に干渉すれば処罰が可能な「外国影響力透明化法」を、シンガポールは2021年に「外国介入防止法」を制定し、中国が海外に設置した孔子学院の運営指針まで定めた。「外国代理人登録法」を制定すれば、韓国に影響力を及ぼそうとする工作行為を事前にモニタリングでき、事後に摘発されれば処罰することができる。内政干渉を遮断し、国家の主権を守ることができる対策ということだ。

外国のスパイがスマートフォンを利用して隠密な情報活動をしながら機密資料を流出しても、現在は遮断する適当な方法がない。現行の通信秘密保護法によると、合法的な携帯電話盗聴が可能だが、電気通信事業者の携帯電話盗聴設備具備を義務化した法条項がなく実効性がない。米国は1994年に制定された通信情報把握支援法に基づき、政府または通信会社が盗聴設備費用を負担していて、英国・ドイツ・オーストラリアも似ている。韓国政府が参考にすべき点だ。

国際政治には永遠の敵も永遠の友邦もない。戦争状況でないとしても国益を蚕食する間諜犯罪は徹底的に防がなければならない。先端ICT時代に諜報活動は国内外、オン・オフラインを問わない。尹錫悦政権は専門家の意見を集めて国益を守る防諜対策を早期に準備する必要がある。

チャン・セジョン/論説委員

◆「国家情報院の対共捜査権廃止はスパイを捕まえないということ…見直し必要」

対共捜査は国家の存立や自由民主体制を扱う重大な事案だ。対共捜査権を組織利己主義と見なしてはいけない。ところが文在寅政権の2020年11月、民主党は巨大議席を武器に国家情報院法改正案を単独で強行処理し、2024年1月から国家情報院の対共捜査権を警察に移した。当時の朴智元(パク・ジウォン)国家情報院長の主導で進めた。

しかしそれに相応する警察の対共捜査力量強化措置はなかった。むしろ人員を減らし、活動費を削減した。非専門家らが指揮部を掌握し、専門家らは対共分野を離れた。警察に対共捜査を担当させたのは、文政権が対共捜査をできないようにするためという解釈が出てくるほどだった。

国民がよく知るように北朝鮮スパイ捜査は国家情報院が最も優れている。尹錫悦大統領は文政権の脱原発政策を「5年間のバカな行為」と言ったが、国家情報院の対共捜査権廃止こそが「国家安全保障の脱原発」のような重大失策だ。

国家安全保障関連業務は単一の機関が単独で遂行するよりも、独立した複数の機関が細かく重複して遂行するのがよい。反復・重複装置がなければエラーが発生する可能性が高い。その間、国家情報院・検察・警察が重複的にしてきた対共捜査を来年から警察が単独でする。

警察は2021年、忠北同志会事件の捜査を国家情報院と共にした。済州間諜団事件と尹美香議員の元補佐官間諜事件も国家情報院と共にしている。合同捜査といっても誰が主導して誰が従うのかは明らかだ。警察は来年から果たして単独で対共捜査をする自信があるのだろうか。国家情報院の対共捜査権廃止は見直す必要がある。

チャン・ソクグァン/元国家情報大学院教授




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