(写真：朝鮮日報日本語版) ▲2018年4月、北朝鮮・平壌の柳京鄭周永（チョ●・ジュヨン）体育館で南北合同公演のリハーサルの準備を行うために会った卓賢民・元青瓦台儀典秘書官と北朝鮮の玄松月・三池淵管弦楽団団長。／写真共同取材団

　2020年10月10日午前0時、北朝鮮が史上初めて夜間の閲兵式を行った。華やかな照明の下で行われた閲兵式で北朝鮮は米本土を狙うことができる新型大陸間弾道ミサイル（ICBM）、北極星3号より大きい新型の潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）である「北極星4A」などを公開し、韓国と米国に脅しをかけた。効果があったと判断したのか、北朝鮮は昨年も夜間に閲兵式を行った。

　これに関連し、青瓦台の卓賢民（タク・ヒョンミン）元儀典秘書官は、夜間の閲兵式のアイデアを提供したのは自分だとメディアのインタビューで自慢した。自身が北朝鮮の音楽家で軍人である玄松月（ヒョン・ソンウォル）氏に直接助言したという。法律専門家からは刑法上の利敵罪、国家保安法などの適用を検討すべきだとの指摘が出ている。

　卓元秘書官は文在寅（ムン・ジェイン）前大統領の任期満了に合わせ、京郷新聞のインタビューに応じた。その中で、卓元秘書官は北朝鮮が夜間に行った閲兵式に関連し、「2018年に玄松月団長（当時の三池淵管弦楽団団長）と演出についてたくさん話した。玄団長は演出専門家ではないが、決定権限があった。最後に会った際、閲兵式は夜にやってはどうかと言った」と述べた。

　卓元秘書官と玄団長は18年4月、平壌で南北合同公演の準備を共に行った。

　卓元秘書官はその理由まで詳細に説明した。北朝鮮軍の「劇的効果」と「感動」のためだとした。正確には「夜にやれば照明を使うことができ、そうしてこそ劇的効果を演出できる。見せたい物は明るく見せ、見せたくない部分は暗くすればよいからだ。だから夜の行事は昼の行事よりも感動が倍になる。その後、北朝鮮は夜間の閲兵式を続けた。北朝鮮の演出は少しずつ洗練されつつある」と述べた。

　実際に朝鮮中央通信は20年8月13日、北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）総書記が政治局会議で、「あらゆる祝賀行事を最高のレベルで特色ある形で準備し、党創建75周年に立派な贈り物として示すことができる大政治祝典になるように、相応する対策を取った」と報じた。

　北朝鮮が夜間に閲兵式を行った後、韓国の軍事専門家は「夜間だったため、閲兵式で公開された新型兵器の識別が難しかった」と評した。

　卓元秘書官は、最近話題になった金正恩氏のミュージックビデオスタイルの軍事映像についても自身と関連づけた。インタビューでは「金正恩がミュージックビデオのように演出したではないか。そこには自分が少し影響を与えたのではないかと思う」と述べて笑った。

　問題の映像はエナメルジャンパーにサングラス姿の金正恩がスローモーションでミサイル格納庫から出てくる場面が話題になった。ハリウッド映画「トップガン」のシーンそっくりで、金正恩が時計を見て、サングラスを外す場面を短い映像にリズム感よく繰り返す編集を行った。PSYの「江南スタイル」のミュージックビデオで用いたコミック技法だ。空中からドローン（小型無人機）で撮影した弾道ミサイルの映像を高速回転させる演出も行った。

　当時も韓国では「北朝鮮に卓賢民のような人物の存在があるのではないか」とする観測が聞かれた。

　法律専門家からは卓元秘書官の主張が事実だとすれば、犯罪に該当する可能性があるとの指摘が出ている。閲兵式の基本的な目的が「軍事力の誇示で自国の士気を高め、敵国を脅かす」ことにあるためだ。さらに、夜間の閲兵式では敵国が兵器を詳細に識別できない効果もあった。

　最近検事長を最後に退任した弁護士は「卓元秘書官本人が『北朝鮮軍に利する意図』までインタビューで自白した以上、刑法上の利敵罪と国家保安法の適用などを検討すべきだ」と述べた。